悪人と善人
『救世』60号、昭和25(1950)年4月29日発行
悪人いわく
「善人という奴は実に怪(け)しからん、俺が悪い事をしようとするといつも邪魔をしやがるのは善人だ」と言う。
なるほど考えてみるとそういう理屈もあろう、悪人の邪魔になるのは法律、警察、裁判所という邪魔物を善人共が作ったからだ――というかどうだか、それは判らないが、多分そうだろうと推測して書いたのである。
負け惜しみではないが、吾々を悪口非難する者もあるが、その度毎に吾々は少しも怒る気はしない、むしろいかに自分は悪人の邪魔をしているかという誇りをさえ感ずるからである。