―― 岡 田 自 観 師 の 論 文 集 ――

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或質屋の話

『光』26号、昭和24(1949)年9月10日発行

 この間東京神田の某質屋の主人から聞いた話だが、最近質屋は大繁盛であるそうで、新規開業も殖えつつあると言う事だ、そうしてこの原因はと聞いてみると「病気のため」で、今日医師に罹った場合、医療費が非常に高くしかも長びくので、生命には代えられないからヒト工面しても続けなければならないという訳で、全く悲惨な話であるというのだ、次は、勤めている会社の給料遅延とこの二つのためというのだ。
 右二つを社会問題として観る時、由々しき大問題であると共に、その解決こそ焦眉の急を要する、すなわち給料遅延は大した問題ではないが、医療費問題の方は底知れない深刻さがある、とすれば本教浄霊のいかに重大意義を有するかである、実際上現代医学はその点忌憚(きたん)なくいえば病気を治癒する力はないのだ、吾らが常に言うごとく、医療は一時的苦痛緩和だけの効果で、その苦痛緩和の方法が、実は病気増悪の原因となる事など全然知らないのだから問題は重大だ。
 この一大誤謬に目覚めないがために、人間はいかに病苦に災いされると共に、その結果として貧窮の境地に落込むという二重苦だから何たる悲惨事であろうか、何よりも前記の質屋の問題だけにみても明らかで、これは氷山の頭が見えたのと同様であろう。
 以上の事実に対し、罹病の場合僅かな治療費で短期間に全治するという医術が生れなければ人間は余りに可哀相(かわいそう)だ、しかし世人はそのような夢にも等しい医術が生れようなどとは想像だも出来ないから、現状のままの状態で仕方がないと諦めて、相変らずの悲劇を繰返しているのが今の実情だ。
 ところが、本教浄霊法こそ右の夢が具体化したものである以上、現社会のこの欠陥に対し晏如(あんじょ)し得ないのだ、そのため本教発行の光新聞及び雑誌地上天国、種々の著書をもって目的達成に邁進しつつあるのだ。
 先日ラジオの「家庭の話題」の時間に、右の質屋の主人がその事を話したが放送局は肝腎な所を削ってしまったとはおかしな話だ、マサか放送員が医師会から賄賂を貰った訳でもあるまい、とすればいよいよ判らない。