―― 岡 田 自 観 師 の 論 文 集 ――

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風水害

『自然農法解説』昭和26(1951)年1月15日発行

 次に、風水害であるが、これは年々増加の傾向にさえあり、その防止に官民共に大いに悩んでいるのは衆知の事実である。その防止施設にはすこぶる多額の費用を要するので、現在としては止むを得ず、一時的間に合せ手段で我慢するより外止むを得ないが、さりとて年々大きな被害を蒙っている以上、何とかしなければならない。せめて今のところ被害を最小限度に喰い止めるより外致し方ないという訳だ。ところが、我自然農法によれば、作物の根張りがつよく、茎折れなどは現在のそれよりも何分の一に減るばかりか、花落ちも少なく、冠水後の稲の腐敗もないから、他田が相当被害を蒙る時でも、自然農法の田は被害という程の被害は認められない程で、人々はただ不思議がるのである。その際根の先をよく調べて見ると、在来の有肥田のそれより、細根の数が非常に多く長いので、根張りが強靱なためである。これは人間にたとえれば毒分のない新鮮な食物を常に摂取していると、健康であるのと同様の理である。またこれはひとり稲や麦には限らないが、農耕者はよく作物の背丈が短く、葉が小さいのを可としているが、これは実付きがよく収穫が多いからで、この点本農法がそうであって、いかに理想的であるかが判るのである。しかも品質優良で、美味な点は経験者の異口同音に唱えるところである。という訳は今までのごとき、有肥によると、葉に栄養分をとられるから葉が延びすぎ、それだけ実に影響を与えるのである。また自然農法によれば、稲の分蘖(ぶんけつ)がすこぶる多く、今日まで最も優良なのは一粒の種で、分蘖百五十、粒数約一万五千という到底信じられない程の、驚異的記録もあった(これは後段に載せたから参照されたい)。なお今一つの特長は、稲藁を使用する場合、非常に強く細工が仕良いそうである。