―― 岡 田 自 観 師 の 論 文 集 ――

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観光日本について

『栄光』218号、昭和28(1953)年7月22日発行

 私は去る五月二日アメリカから来た日本系の観光団の感想をラジオで聴いたが、その中で異口同音にいう事は、日本は景色は素晴しいが、便所の構造の悪い事、宿屋の便所にタオルのない事、電車などで男性が不親切で、老人や女性に対し席が空いても、男が慌(あわ)てて腰掛けるのは、アメリカでは見られない光景である事、京都を除いて他の都会は道路が狭く悪い事等の話であるが、これについていささか思いついた点をかいてみよう。
 というのは私は箱根美術館を造り、次は熱海美術館、その次は京都美術館というように、各所に美術館を造ると共に、日本独特の庭園をも造る計画であるが、その目的とするところはもちろん日本人を楽しませると共に、国策上観光外客誘致に貢献したいとの考えからである。衆知のごとく日本の風景は世界に定評のある素晴しさであり、今後交通機関発達と相まって、観光外客の数も益々増えるに違いないから、右のような欠点は何を措(お)いても、急速に改善しなければならないと思うのである。
 それについて吾々としても、せっかく立派な地上天国の模型を造っても、他の諸々の条件が具(そな)わらないとしたら、遺憾この上もないので、この点朝野(ちょうや)を挙(あ)げて努力して貰たいと切に念願するのである。