これから世界はどうなる
『栄光』206号、昭和28(1953)年4月29日発行
これからの世界はどうなるかという事程大きな問題はあるまい。これについて私は大体の事をかいてみようと思うが、まず今回突如として消えてしまった彼(か)の稀世(きせい)の大物スターリンである。まずこの事から取上げてみるが、今から約百年前彼のカール・マルクスとエンゲルスが唱え出した共産主義理論であるが、当時は単なる理想論として、学者が研究の対象と一部の人達の社会運動に利用した範囲を出なかったのである。ところが思ったよりも早く現実に現わしたのは、彼のレーニンであった事は、まだ記憶に残っているが、彼が当時のロマノフ政権をたちまちにして転覆してしまい、これからという時この世を去り、後を継いだのがスターリンであるが、彼も営々三十有余年にして強国な共産帝国を築き上げたのであるから、その巨腕たるや、全く世紀の偉観といってもいい。従って善悪は別としても、彼もまた歴史上の一偉人であろう。ところがここで考えねばならない事は、スターリン亡き後のソ連と、そうして共産主義の未来である。なるほど後継者としてのマレンコフも、相当の人物には違いないが、到底スターリン程の輪廓(りんかく)はないのはもちろんで、恐らくスターリン全盛時代再現はまず望みないといえよう。見ようによっては共産主義華やかな時代は過ぎ、漸次下り坂に向うのではないかと思うのは私ばかりではあるまい。何となれば彼の没後まだいくらも日の経たないのに、従来の対外政策は一変し、平和攻勢を大いに推し進めて来たにみてもそう思えるのである。
それはそれとして、今度は米国の将来であるが、なるほどスターリン在世当時からみれば、当分は余程楽にはなるであろうがこれとてもまだ中々油断は出来ないであろう。というのはソ連の軍備は目立たないが、弛(ゆる)みなく充実に努めているのは、最近の外電によっても窺(うかが)われる。従ってそれに対するア大統領の方針もある時期までは今まで通りの軍備は続けるという事を言明しているにみても明らかである。このような訳で世界平和の前途は益々遼遠(りょうえん)であるのは言うまでもない。そうして私は神示によって同国の将来を卜(ぼく)してみると、同国は近き将来ほとんど空前ともいうべき一大問題に逢着(ほうちゃく)する事になっている。しかし今これをハッキリ言う事は、神の許しがない以上出来ないが、それが世界的大変化の端緒(たんちょ)となって順次宗教、政治、経済、教育、医学等々のあらゆる文化面にも及ぼすであろう事も想像されるし、ソ連においても大変化が起り、その結果世界は新しい思想が生まれ、終(つ)いには人類待望の平和幸福な世界は実現の段取となるであろう。
ではその新しい思想とは何かというと、これこそ共産主義に非ず、社会主義にも、資本主義にも民主主義にも非ずという、左に偏せず、右に偏せず、中性でもないという吾々の方でいう伊都能売(いづのめ)思想ともいうべき、高度の文化思想が生まれ、やがてはこの思想が今後の世界をリードする事になるので、これこそ深甚なる神の経綸の現われであり、しかも決定的のものである以上、好むと好まざるにかかわらず、必ず実現するのである。すなわち本教のモットーである永遠なる病貧争絶無の世界、地上天国が築かれるのである。
ただしかしそうなるまでには迂余曲折(うよきょくせつ)、波瀾重畳(はらんちょうじょう)、帰趨(きすう)に迷う事にもなろうから、予(あらかじ)めその覚悟を決めて置くべきである。覚悟とはもちろん信仰に徹する事で、これによっていかなる悩みも軽く済む以上、ここに神の大愛を見出すのである。要するにこの世界大転換期の根本は、悪が滅び善が栄えるという文字通りの新時代が来るのであるから、これが信じられないとしたら、その人こそ哀れなる者よ、汝の名は無神論者也である。