薬と名の付くものは全部麻薬なり 医学断片集(21)
『栄光』174号、昭和27(1952)年9月17日発行
今日世人は麻薬というと、非常に恐ろしいもののように思っているが、実は薬と名の付くものは、全部麻薬である事の意味をかいてみるが、これは誰も知るごとく初め麻薬を用いるや、頭脳は明晰となり、爽快感が起るので、段々癖になってしまうので、これが中毒である。ところが実はあらゆる薬も同様であって、ただ麻薬と違うところは、麻薬は即座に効き目があるが、外の薬はそうはゆかないで、言わば長持がするただそれだけの異(ちが)いさである。風邪でも結核でも、胃病、心臓病、何でもかでも理屈は二つである。従って現代人のほとんどは、軽微な麻薬中毒に罹っているといってもいいくらいであるから、病気に罹り易いのである。
そうして面白い事には、近頃よくこういう話を聞く、それはアノ薬は以前は非常によく効いたが、この頃効かなくなって困ってしまうというのである。これは全く薬の中毒患者が増えたためであるが、それに気が付かないだけの事である。でなければまさか人の方が以前と異なる体になった訳ではあるまいから、全く医学の盲点を物語っているといってよかろう。