―― 岡 田 自 観 師 の 論 文 集 ――

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宗教と政治

『信仰雑話』P.7、昭和23(1948)年9月5日発行

 政治と宗教とは大いに関係があるにかかわらず、今日まであまり関心を払われなかったのは不思議である。むしろ、宗教が政治に関与するを好まないばかりか、かえって政治から圧迫されて来たというのが、終戦以前までの実状であった。これは古往今来各方面にみらるる現象で、宗教によっては迫害の強い結果、一時は法灯のまさに消えなんとした例も乏しくはなかった。しかしながら、宗教の目的である理想世界を造り、人類の幸福を増進せんとしても、政治が良くなくてはその目的は達し得られない道理である。この意味において、良き政治には良き政治家が必要となって来るが、良き政治家たるには、どうしても宗教心がなくてはならない。今後の時代をして理想社会を実現せんとするには、まず宗教を政治に織り込む事である、と私は思うのである。
 政治家の最も陥りやすい欠点は、外国は知らないが、日本においては涜職問題であろう。しかるにこの原因は宗教心のない唯物的政治家だからである――といえよう。何としても、今後は宗教的政治家の輩出こそ我等が要望するところのもので、それによってのみ将来の国運の進展を期待し得らるるであろう。
 私は新日本建設にあたって、何よりも政治家に宗教心を培い、宗教政治が行なわれるようにならなければならないと思う。今人々は口を開けば政治の腐敗、選挙の不正、役人の涜職、人民の脱税、教育家の堕落等をあげるが、全くその通りで、この泥沼同様の社会を浄化せんとして、為政者を始めそれぞれの当事者人民大衆が苦慮しており、その防犯手段として法の力のみを頼りにしているが、これは全然根本を逸している。何となれば、犯罪の根拠は人間の内面にある魂そのものであるからである。この魂を浄化する事こそ真に効果ある方法で、それは正しい信仰以外他にない事を私は信ずるのである。