――― 岡 田 自 観 師 の 御 歌 集 ―――

 

御     歌

原   典

ほうすいろの みずあおあおしくびすくめ ふゆのゆうぐれはしいそぎゆく
放水路の 水青あおし首すくめ 冬の夕ぐれ橋いそぎゆく
山と水 0703
S 8.**.**
城 東
(荒 川)
新東京を詠む
ほうとうくめん へいぜんとしてわかきめに ちかづくかれのよこがおをみるも
蓬頭垢面 平然として若き女に 近づく彼の横顔を見るも
※蓬頭垢面=乱れた髪とあか染みた顔。身だしなみに無頓着なこと。
山と水 0391
S 6.12.23
彼の横顔
ほうとじょうとりとぎとのよつどもえ ご・いちごじけん
法と情と理と義との四つ巴 五・一五事件
山と水 0946
S 8. 8.21
五・一五
事件
ほうねんの ことばはむかしがたりなる いまはかなしききょうさくのこえ
豊年の 言葉は昔語りなる 今は悲しき凶作の声
「栄光」 234
S28.11.11
 
ほうりゅうじ ここのぶっきょうびじゅつこそ にほんぶんかのほこりとぞおもう
法隆寺 ここの仏教美術こそ 日本文化の誇とぞ思ふ
地上天国48
S28. 5.25
嵯峨紀行34
ほうりんを てんいましましむげこうを あまねくたもうせそんとうとき
法輪を 転移ましまし無碍光を 普く賜う世尊貴き
※法輪を転ず=仏が説法する。無碍光=仏の発する智慧や救済力の光。
御讃歌集
111
三尊の
彌陀
ほえるしなよ あだむ・いぶのしそんが おまえをわらっている
吼える支那よ アダム・イブの子孫が お前を嗤つてゐる
山と水 0300
S 6.10.18
世界の今
ほかほかと とこぬちにあるこころよさ さんじゃくさきにあさのひさせる
ほかほかと 床ぬちにある快よさ 三尺先に朝の陽させる
山と水 1172
S10. 1.10
ほがらかな はるのあさぞらいくすじも やなぎのえだのかかりてうごかず
ほがらかな 春の朝空いくすじも 柳の枝のかかりてうごかず
山と水 0790
S 8. 3.10
桜の頃
ほがらかな ゆめをかかえてたつにわべ むしなくこえもしたしまれぬる
ほがらかな 夢をかかえて立つ庭べ 虫啼く声も親しまれぬる
山と水 0943
S 8. 8.21
吾と人
ほがらかに うみはあけたりひをうけて うみぞいのやまみなくれなえる
ほがらかに 海は明けたり陽をうけて 海ぞいの山みなくれなえる
山と水 0669
S 8. 1. 1
勅題
朝の海
ほがらかに にわとりないてやまあいの そらのすそへにあかねほのめく
ほがらかに 鶏鳴いて山間の 空の裾へに茜ほのめく
山と水 0372
S 6.12.23
暁の鶏声
ほけきょうの はなのうてなにのりのみは かんのんふもんぼんにやどれる
法華経の 花の台に教の実は 観音普門品に宿れる
御讃歌集
123
のりのはな
法の華
ほこりくるう つじにやすまずみはりたつ ひとをえらしとわがおもいける
埃くるふ 辻にやすまず見張り立つ 人を偉しとわが思いける
山と水 0480
S 7. 2.10
塵 埃
ほこりまう したのほそうろひのさして おもなめらかにうちみずひかる
埃舞う 下の舗装路陽のさして 面なめらかに打水光る
山と水 0484
S 7. 2.10
塵 埃
ほしいねの かけなめるうえとんぼの とまるるがありはなるるがあり
干稲の かけなめる上蜻蛉の とまるるがありはなるるがあり
※かけなめる=掛け並らべる。
山と水 0960
S 8. 9.18
赤蜻蛉
ほしうする そらをみあげつむねはりて すがしきあさけすうもうつろに
星うする 空を見上げつ胸はりて すがしき朝気吸ふも空ろに
山と水 0826
S 8. 4.10
ほしがみんなこきゅうしている いしきてきに
星がみんな呼吸してゐる 意識的に
山と水 0493
S 7. 2.10
ほそうろは ひにもえたぎりすずかけの かげのみしるくひとあしたえける
舗装路は 陽にもえたぎり篠懸の 影のみしるく人足絶えける
山と水 0906
S 8. 7.20
日盛り
ほのぼのと あけゆくあさのしずもりを ひとひらふたひらさくらばなちる
ほのぼのと 明けゆく朝の静もりを 一片二片桜花散る
明麿近詠集
S17. 4.10
110
立 春
ほのぼのと うみべはあけぬやまかげに しづがふし〔せ〕やのいつつむつみえ
ほのぼのと 海辺は明けぬ山かげに 賤が伏屋の五つ六つ見え
明麿近詠集
S16. 1. 1
071
ほのぼのと しらむしょうじにかげうつる めぶきのえだにことりうごける
ほのぼのと 白む障子にかげうつる 芽ぶきの枝に小鳥うごける
山と水 1095
S 9. 3.16
春の曙
ほのぼのと そらあかねしてきりふかく うみのおもてをおおいけるかも
ほのぼのと 空茜して霧ふかく 海の面をおほひけるかも
山と水 0177
S 6. 8.15
ほのぼのと はるたちそめぬよをすくう わがかむわざのゆくてにもにて
ほのぼのと 春立ち初めぬ世を救う わが神業の行手にも似て
明麿近詠集
S21. 2. 5
173
立 春
ほのぼのと ひんがしのそらあかるみて れいめいつぐるかけどりのこえ
ほのぼのと 東の空明るみて 黎明告ぐる家鶏鳥の声
御讃歌集
234
あさあけ
朝 明
ほのぼのと ひんがしのそらあかるみて れいめいつぐるかけどりのこえ
ほのぼのと 東の空明るみて 黎明告ぐる家鶏鳥の声
御讃歌集
(改)032
れいめい
黎 明
ほのぼのと よのれいめいはきつるなり ひがしのはてにまなことどめそ
ほのぼのと 世の黎明は来つるなり 東のはてに眼とどめそ
御讃歌集
(改)029
れいめい
黎 明
ほのぼのと よのれいめいはきつるなり ひがしのはてにまなことどめそ
ほのぼのと 世の黎明は来つるなり 東の果に眼とどめそ
御讃歌集
225
夜の終り
ほほえみは おみなのいのちかもいつもかも おみなにあえばしかおもいける
微笑は 女の命かもいつもかも 女に会えばしか思いける
山と水 1185
S10. 2.18
ほりのかげ くろぐろとしていとながく つきよのみちをなかばふさげる
塀の影 黒ぐろとしていと長く 月夜の路を半ばふさげる
山と水 0160
S 6. 7. 6
月の光
ほりのへの ていげきあたりつきかげを ふみゆくひとのいくつかあるらし
濠の辺の 帝劇あたり月光を ふみゆく人のいくつかあるらし
山と水 0159
S 6. 7. 6
月の光
ほりばたの あおやぎのえださゆるがず しだれえながくそらまうつれる
濠端の 青柳の枝さゆるがず しだれ枝ながく空まうつれる
山と水 1220
S10. 6.15
六月の空
ほりばたの さくらのさきてでんしゃより ひそかにはるをあじわいにける
濠端の 桜の咲きて電車より ひそかに春を味はいにける
山と水 0543
S 7. 3.16
ほろびゆく いつわりのよのはかなさよ ゆるさせたまうあめつちのかみ
滅び行く 偽りの世の儚なさよ 赦させ給う天地の神
御讃歌集
285
れいほう
霊 峰
ほろびゆく いつわりびとのはかなさよ ひかりのみちにそむけばなりける
滅びゆく 偽り人の儚さよ 光の道に背けばなりける
御讃歌集
(改)264
光の道
ほろぶもの いきのこるものたちわかれ かくておわりのひとなりぬらん
滅ぶ者 生き残る者立ち別れ かくて終りの日となりぬらん
「栄光」 250
S29. 3. 3
 
ほろぶもの よみがえるものおのずから たちわかるらめよのおわりには
滅ぶもの 甦へるもの自から 立ち分るらめ世の終りには
地上天国18
S25.11.25
 
ほんものを にせものとおもいにせものを ほんものとおもうはめしいなればなり
本物を 贋物と思ひ贋物を 本物と思ふは盲なればなり
御讃歌集
(改)357
めしい

 

 

御     歌

原   典

ぼうそうの ねむれるしまもやまなみも あざやかにしつひはのぼりけり
房総の 眠れる島も山並も あざやかにしつ日は昇りけり
山と水 0040
S 6. 6.15
安房
歌紀行
ぼうそうの しまやまくっきりうきいでて とうきょうわんにこちふきわたる
房総の 島山くつきり浮き出でて 東京湾に東風吹きわたる
山と水 0174
S 6. 8.15
ぼつりぼつりときゃくとかたっている ときどきはさんでみる すみび
ぼつりぼつりと客と語つてゐる ときどきはさんでみる 炭火
山と水 0604
S 7.11.20
炭 火
ぼんがんに うつりうべしやいとたかき かみのみすがたあらわれたまうも
凡眼に 映り得べしやいと尊き 神の御姿現はれ給ふも
祭典時御歌
S29. 3.23
春季大祭
御詠 08
ぼんがんに うつりうべしやいとたかき かみのみすがたあらわれたまうも
凡眼に 映り得べしやいと尊き 神の御姿現はれ給ふも
地上天国 59
S29. 6.15
 
ぼんしょうの おとむらさきのくれいろを つたうておぐらきもりにこむらう
梵鐘の 音むらさきの暮色を つたうて小ぐらき森にこむらふ
※梵鐘=寺院の鐘楼の釣り鐘。
山と水 0455
S 7. 1.15
梵 鐘

 

 

御     歌

原   典

ぽかぽかと かぜあたたかくしめりあり はなぐもりけるはなのしたゆく
ぽかぽかと 風あたたかくしめりあり 花曇りける花の下ゆく
山と水 0531
S 7. 3.16
春はゆく
ぽっかり なめらかなそらにひとつ はるらしい つき
ぽつかり なめらかな空に一つ 春らしい 月
山と水 0485
S 7. 2.10

46首