――― 岡 田 自 観 師 の 御 歌 集 ―――

 

御     歌

原   典

にいめのあおさがぜんざんをそめつくした なごやかなはるがきたんだ
新芽の青さが全山を染めつくした なごやかな春が来たんだ
山と水 0478
S 7. 1.20
 
にかいより おりるたまゆらひるなれや いおやくにおいのふとながれくる
二階より 降りるたまゆら午なれや 魚焼くにほいのふと流れくる
山と水 1040
S 9. 1. 5
わが家
にぎやかな しわすのまちをぬけきりて でんしゃまつまのさむさにふるう
賑やかな 師走の町をぬけきりて 電車待つ間の寒さにふるう
山と水 0663
S 7.12.30
にくをきり ほねをけずりてちをしぼる いやしのわざをただしたくぞおもう
肉を斬り 骨を削りて血を搾る 医しの業を正したくぞ思ふ
明麿近詠集S19. 2. 5 166
立春其他
にさんけん のうむのなかのわらやより あさけふるわすにわとりのこえ
二三軒 濃霧の中の藁家より 朝気ふるはす鶏の声
山と水 0371
S 6.12.23
暁の鶏声
にしにうまれ ひがしにうつりしぶんめいを きよめてかえすときとなりけり
西に生まれ 東に移りし文明を 浄めて復へす時となりける
地上天国43
S27.12.25
 
にじのごとき ごしきぬまとうこをしたに みつあえぎゆくもしらねおくやま
虹の如き 五色沼とう湖を下に 見つあえぎゆくも白根奥山
山と水 0880
S 8. 6.19
奥日光
にじゅうおくの めしいのまなこひらかんと ひかりまくばるわれにぞありける
二十億の 盲の眼開かんと 光まくばる吾にぞありける
全集未収録
S28. 2. 4
立春祭
御歌12
にじゅうおくの めしいのまなこひらかんと ひかりまくばるわれにぞありける
二十億の 盲の眼開かんと 光まくばる吾にぞありける
地上天国46
S28. 3.25
全集未収録
にじゅうよおくの あわれせきしをあいのみてに いだかれたまうかみのかしこき
二十余億の 憐れ赤子を愛の御手に 抱かれ給ふ神の畏き
「栄光」 212
S28. 6.10
 
にせんよねん かかりししゃかやきりすとの わざにもまさんわれのじゅうねん
二千余年 かかりし釈迦やキリストの 業にも勝さん吾の十年
祭典時御歌
S29. 1. 1
新年御詠 10
にせんよねん かかりししゃかやきりすとの わざにもまさんわれのじゅうねん
二千余年 かかりし釈迦やキリストの 業にも勝さん吾の十年
地上天国 57
S29. 2.25
新年御詠
にっぽんの さいけんいともたやすかり みなうそいわぬたみとなりなば
日本の 再建いともたやすかり みな嘘いはぬ民となりなば
地上天国11
S24.10.20
正直と嘘
にっぽんの さいけんいともたやすかり みなうそいわぬたみとなりなば
日本の 再建いとも容易かり 皆〔悉〕嘘言はぬ民となりなば
御讃歌集
(改)232
正直と嘘
にっぽんは せかいにとなきびのくにと とつくにびとにもしらせたくおもう
日本は 世界二となき美の国と 外国人にも知らせたく思ふ
地上天国 59
S29. 6.15
熱海の春
にぶいろに ぬりつぶされしふゆのよの つきてるしたにねむるまちまち
鈍色に 塗りつぶされし冬の夜の 月照る下に眠る街々
山と水 1181
S10. 2.10
冬の月
にほんじの なにあくがれておとなえば まだみぬきなりさらそうじゅという
日本寺の 名に憧れて訪えば まだ見ぬ木なり沙羅双樹といふ
山と水 0019
S 6. 6.15
乾坤山
にほんひじょうじのせいさんしゃとしてのとっけんかいきゅう
日本非常時の生産者としての特権階級
山と水 1009
S 8.10.20
非常時
にょいのたま うちふるいなばいかならん あくまといえどおののくなるらん
如意の珠 うち揮ひなば如何ならむ 悪魔といえど戦くなるらむ
明麿近詠集
S24. 6.17
468
最後の日
にょいのたま うちふるいなばいかならん ひととしいえどまなこくらまん
如意の珠 打揮いなば如何ならむ 人としいへど眼くらまん
祭典時
S26. 2. 5
立春御詠15
にょいのたま うちふるいなばいかならん ひととしいえどまなこくらまん
如意の玉 うち揮ひなば如何ならむ 人としいへど眼くらまむ
御讃歌集
(改)436
無題歌
にょいのたま ふるわんときぞせまるらし このうつしよのさまをしみれば
如意の珠 揮はん時ぞ迫るらし 此現し世の状をしみれば
明麿近詠集
S15.12.23
059
にょらいぼさつ だいししょうにんこじぜんじ てがらたてんときそうたまのよ
如来菩薩 大師上人居士禅師 手柄立てんと競ふ霊の世
箱根地上天国完成記念祭御歌15
S28. 6.15
にょらいぼさつ だいししょうにんこじぜんじ てがらたてんときそうたまのよ
如来菩薩大師上人居士禅師手柄立てんと競ふ霊の世
地上天国49
S28. 6.25
箱根地上天国完成記念祭御詠
にわかあらず しぜんかあらずたぐいなき このしんえんはうずのてんごく
庭かあらず 自然かあらず類なき 此神苑は珍の天国
地上天国51
S28. 8.25
箱根の夏14
にわぎくの おおかたかれぬいちにりん のこんのはなをおしとみいるも
庭菊の 大方枯れぬ一二輪 残んの花を惜しと見いるも
※残んの=残っている。
山と水 0347
S 6.11. 6
初 冬
にわにさかる さくらのはなをふきあまる かぜはわがいるへやにとどまる
庭にさかる 桜の花をふきあまる 風はわがゐる部屋にとどまる
山と水 0791
S 8. 3.10
桜の頃
にんげんが つくりしいもてにんげんを すくわんとするなんせんすかも
人間が 作りし医もて人間を 救はんとするナンセンスかも
「栄光」 225
S28. 9. 9
 
にんげんが つくりしかがくもてにんげんの いのちをすくうなんせんすかも
人間が 作りし科学もて人間の 命を救うナンセンスかも
「栄光」 223
S28. 8.25
 
にんげんの あたまわるきはしんちゅうに じゃあくのむしのすくえばなりける
人間の 頭悪きは心中に 邪悪の虫の巣喰へばなりける
地上天国39
S27. 8.25
 
にんげんの あらゆるなやみのうむもとは あくのこころのほかよりぞなき
人間の 凡ゆる悩みの生む因は 悪の心の外よりぞなき
「栄光」 170
S27. 8.20
 
にんげんの いたつきいやすちからなき しゅうきょうのなどよをすくえめや
人間の 病医す力なき 宗教のなど世を救えめや
「栄光」 253
S29. 3.24
 
にんげんの いのちのたからうむつちを ひどくにけがすおろかなるよや
人間の 命の宝生む土を 肥毒に汚す愚かなる世や
S28. 9.23 秋季大祭
御歌10
にんげんの いのちのたからうむつちを ひどくにけがすおろかなるよや
人間の 命の宝生む土を 肥毒に汚す愚かなる世や
地上天国53
S28.10.25
秋季大祭
御詠
にんげんの いのちのつなをもちたまう かみのおんてをはらうおろかさ
人間の 生命の綱を持ち給ふ 神の御手を払ふ愚かさ
地上天国32
S27. 1.25
 
にんげんの いのちほろぼすおそろしき やくどくしらすわがおしえかも
人間の 命滅ぼす恐ろしき 薬毒知らす我教えかも
「栄光」 254
S29. 3.31
 
にんげんの かたちをしたるやくどくの かたまりおおきよぞあわれなる
人間の 形をしたる薬毒の 塊多き世ぞ哀れなる
「栄光」 254
S29. 3.31
 
にんげんの こころをけがすちりあくた あらうげいじゅつのそのつくりける
人間の 心を汚す塵芥 洗ふ芸術の苑造りける
箱根地上天国完成記念祭御歌 12
S28. 6.15
にんげんの こころをけがすちりあくた あらうげいじゅつのそのつくりける
人間の心を汚す塵芥洗ふ芸術の苑造りける
地上天国49
S28. 6.25
箱根地上天国完成記念祭御詠
にんげんの ちえのみいかにふるうとて かいなきよなりかみにそむけば
人間の 智慧のみ如何に揮ふとて 甲斐なき世なり神に背けば
「救世」63
S25. 5.20
 
にんげんの ちからとかみのちからとの ちがいさちえもてはかりうべしや
人間の 力と神の力との 異ひさ智慧もて計り得べしや
S28.12.23 御聖誕祭
御歌07
にんげんの ちからとかみのちからとの ちがいさちえもてはかりうべしや
人間の 力と神の力との 異ひさ智慧もて計り得べしや
地上天国 56
S29. 1.25
御生誕祭
御詠
にんげんの つくりしりくつにとらわれて まことのみえぬおろかなるよや
人間の 作りし理屈に囚はれて 真の見えぬ愚かなる世や
地上天国55
S28.12.25
 
にんげんの とうときいのちすくわする ちからぬしはめしやよりなき
人間の 尊き生命救はする 力の主はメシヤよりなき
S26.12.23 御聖誕祭
御歌07
にんげんの ひげきのもとをたずぬれば かがくめいしんみいだすぞうき
人間の 悲劇の因を訊ぬれば 科学迷信見出すぞ憂き
「栄光」 215
S28. 7. 1
 
にんげんの ふこうのもとはただひとつ くすりとなづくるどくにぞありける
人間の 不幸の因は只一つ 薬と名付くる毒にぞありける
「栄光」 244
S29. 1.20
 
にんげんの やまいのもとはくすりなり これをしらすがわがしめいなる
人間の 病の因は薬なり これを知らすが我使命なる
「栄光」 247
S29. 2.10
 
にんげんの ゆめまざまざとじつとなりし ちじょうてんごくみよやよのひと
人間の 夢まざまざと実となりし 地上天国見よや世の人
地上天国 59
S29. 6.15
熱海の春
にんげんは ひくきぶんかをつくるもの たかきぶんかはかみつくるなり
人間は 低き文化を作るもの 高き文化は神造るなり
「栄光」 220
S28. 8. 5
 
にんげんを たのしませにつつおのずから こころたかむるびこそとうとき
人間を 楽しませにつつ自づから 心高むる美こそ尊き
「栄光」 166
S27. 7.23
 
にんげんを つくりしかみはにんげんを やしなうかてをつくらざらめや
人間を 造りし神は人間を 養う糧を造らざらめや
地上天国54
S28.11.25
命の糧
にんげんを にんぎょうのごとしゅうりする これをいがくのしんぽというなる
人間を 人形の如修理する これを医学の進歩というなる
「栄光」 246
S29. 2. 3
 
にんげんを ぶっしつとみるいがくこそ めしいにかあらんかみのみめには
人間を 物質と見る医学こそ 盲にかあらん神の御目には
地上天国50
S28. 7.25
全集未収録

53首