――― 岡 田 自 観 師 の 御 歌 集 ―――

 

御     歌

原   典

ゆあみして はだえもかろくえんばたに あおばにむかいうっとりといる
浴みして 肌もかろく縁端に 青葉にむかいうつとりとゐる
山と水 0839
S 8. 5.10
浴  後
ゆいしょある みやしろらしもみはしらの かみなをおろがみさいしくだりぬ
由緒ある 神社らしも三柱の 神名を拝み賽し下りぬ
山と水 0682
S 8.**.**
品 川
(品川神社)
新東京を詠む
ゆいぶつかがくの とりこになりしめいしんの からをやぶらんかみのちからに
唯物科学の 虜になりし迷信の 殻を破らん神の力に
地上天国31
S26.12.25
 
ゆうあかね かすみににじみにじみにつ むらむらつつまうむらさきのいろ
夕茜 霞に滲み滲みにつ 村むらつつまふむらさきの色
山と水 0498
S 7. 2.25
ゆうあかり のこるにあらでやまのはに いでしばかりのみかずきのかげ
夕明り 残るにあらで山の端に 出でしばかりの三日月の光
山と水 0259
S 6.10. 6
ゆうあらし ひとしきりふきつきいでて にわのおちばをしろじろてらせる
夕嵐 ひとしきりふき月出でて 庭の落葉を白じろ照らせる
山と水 0363
S 6.11.10
落 葉
ゆうがらす なくねをあとにつくばやま ふりみふりみつきしゃにのりけり
夕鴉 鳴く音を後に筑波山 振り見ふりみつ汽車に乗りけり
山と水 0340
S 6.11. 1
筑波根
の秋
ゆうきゅうと よせてはかえすわだつみの なみにいわはだいくとせきざみし
悠久と よせてはかえす和田津見の 波に巌肌幾歳刻みし
※わだつみ=海の神。また,海のこと。
山と水 0186
S 6. 8.15
ゆうぐれて おもなまめひとはちじゅうよ みやこほてるにばんさんかいひらきぬ
夕暮れて 主な信徒八十余 都ホテルに晩餐会開きぬ
地上天国48
S28. 5.25
嵯峨紀行35
ゆうぐれに すすきののみちゆくともと つきのあらばとかたりあいけり
夕暮に 芒野の路行く友と 月のあらばと語り合ひけり
山と水 0262
S 6.10. 6
ゆうぐれのそらに ちじくのうごきを ふと うなずく
夕暮の空に 地軸の動きを ふと うなづく
山と水 0435
S 7. 1.18
動 く
ゆうげんびみょう かみのしぐみのいやふかく いうことばさえなきぞかしこし
幽幻〔玄〕微妙 神の仕組のいや深く いふ言葉さへなきぞ畏し
祭典時御歌
S29. 1. 1
新年御詠 12
ゆうげんびみょう かみのしぐみのいやふかく いうことばさえなきぞかしこし
幽玄微妙 神の仕組のいや深く いう言葉さへなきぞ畏し
地上天国 57
S29. 2.25
新年御詠
ゆうげんびみょう ふかさもしらぬかみのなぞ かたちとなりてあれなんとすも
幽幻微妙 深さも知らぬ神の謎 形となりて現れなんとすも
S28.12.23 御聖誕祭
御歌11
ゆうげんびみょう ふかさもしらぬかみのなぞ かたちとなりてあれなんとすも
幽幻微妙 深さも知らぬ神の謎 形となりて現れなんとすも
地上天国 56
S29. 1.25
御生誕祭御詠
ゆうさりて あおたをわたるかぜすずし ゆくてのやみをほたるかすめぬ
夕さりて 青田を渡る風涼し 行手の闇を蛍かすめぬ*
山と水 0006
S 6. 5.18
春すぎぬ
ゆうされば あかとんぼのむれいゆく そらをみるなりのきばあおぎつ
夕されば 赤蜻蛉のむれいゆく 空を見るなり軒端あほぎつ
山と水 0958
S 8. 9.18
赤蜻蛉
ゆうぞらを あおげばなつのかばしらの ごとせいれいのむらがりとびかう
夕空を 仰げば夏の蚊柱の ごと蜻蛉のむらがりとびかふ
山と水 0620
S 7.12. 5
蜻 蛉
ゆうぞらを くぎりてくろきやまのえを みょうじょうひとつとびくゆらしも
夕空を くぎりて黒き山の上を 明星一つ飛びゆくらしも
山と水 0575
S 7. 5.25
能登近く
ゆうづきの うすらあかりにみずうてば にわべのこはぎぬれひかりけり
夕月の うすら明りに水うてば 庭べの小萩濡れ光りけり
山と水 0935
S 8. 8.21
ゆうづきの こよいのそらのさやけさよ きょうしらさめのふりしをうかめぬ
夕月の 今宵の空のさやけさよ 今日白雨のふりしを浮めぬ
※さやけし=さわやかで見た目にもはっきりしている。あざやかである。
山と水 0904
S 8. 7.20
白 雨
ゆうづきの ひかりはあわしなでしこの はなほのめけるつゆくさのなか
夕月の 光は淡し撫子の 花ほのめける露草の中
山と水 0873
S 8. 6.19
河原撫子
ゆうばえの ひかりのなかをむらむらと むれからすすぎひはくれにける
夕映の 光の中をむらむらと むれ鴉すぎ日は暮れにける
山と水 1157
S 9.11.10
夕 鴉
ゆうばえの むらだちくもをこえにける からすありけりはかがやせ
夕映の むらだち雲を越えにける 鴉ありけり羽かがやかせ
※むらだち=群立ち。群がって生えていること。
山と水 1091
S 9. 3. 6
春 閑
ゆうまけて はっけいえんのたかだいゆ ながむるうみにいさりびまたたく
夕まけて 八景園の高台ゆ 眺むる海に漁火またたく
山と水 0011
S 6. 5.18
春すぎぬ
ゆうまけて ふゆひのとどくにわすみに いとひそけくもびわのはなさく
夕まけて 冬陽のとどく庭隅に いとひそけくも枇杷の花咲く
山と水 1022
S 8.11.18
冬静か
ゆうもやの そらにまたたくむらのひを はろかにみつつでんしゃをまつも
夕靄の 底にまたたく村の灯を はろかにみつつ電車を待つも
山と水 0999
S 8.10.18
武蔵野
探秋
ゆうもやの たんぼはやみになりにけり つきはひそかにおがわにうける
夕靄の 田圃は暗になりにけり 月はひそかに小川にうける
山と水 0855
S 8. 5.20
夕 月
ゆうもやは うれたのうえにもやいつつ でんかしらかべおぐらくなりぬ
夕靄は 熟れ田の上にもやいつつ 田家の白壁おぐらくなりぬ
山と水 0997
S 8.10.18
武蔵野
探秋
ゆうもやは かすみがうらにただよいて まこものうえをしらほゆくなり
夕靄は 霞ケ浦にただよいて 真菰の上を白帆ゆくなり
※真菰=イネ科の大形多年草。水辺に群生。稈(かん)の高さ約1.5メートル。
山と水 0094
S 6. 7. 1
水郷めぐり
ゆうやみに おぼろげながらみちをゆく なつのおみなのみなよしとみゆも
夕暗に おぼろげながら路をゆく 夏の女のみな美しとみゆも
山と水 0868
S 8. 6.19
夏の女
ゆうやみは わかきおみなのすがたよき わがすこしおいはずかしくなりぬ
夕闇は 若き女の姿よき わが少し追いはづかしくなりぬ
山と水 0520
S 7. 3.10
さまよう
ゆえないかんきが ほのかにおこって すっと きえていった
故ない歓喜が ほのかに起つて すつと 消えていつた
山と水 0423
S 7.12.25
感 情
ゆかしけれ わがみのことをあとにして ひとのよかれとねがうこころの
床しけれ 吾身の事を後にして 他人の良かれと希う心の
御讃歌集
149
人の道
ゆかしけれ わがみのことをあとにして ひとのよかれとねがうこころの
床しけれ 我身の事をあとにして 人のよかれと願ふ心の
御讃歌集
(改)064
人の道
ゆきくれて みちにまよえるこひつじを すくわせたもうかんのんのみて
ゆきくれて 道に迷える小羊を 救わせ玉う観音の御手
御讃歌集
126
法の華
ゆきげする のやうらうらとかげろうの ゆらめきたちてなにかたのしき
雪解する 野やうらうらと陽炎の ゆらめき立ちて何かたのしき
山と水 0452
S 7. 1.15
陽 炎
ゆきしもの きびしきふゆをたえしのび はるたつきょうをいわうみまつり
雪霜の 厳しき冬を堪へ忍び 春立つ今日を祝ふ御祭
祭典時御歌
S29. 2. 4
立春祭
御詠 01
ゆきしもの きびしきふゆをたえしのび はるたつきょうをいわうみまつり
雪霜の 厳しき冬を堪え忍び 春立つ今日を祝う御祭
地上天国 58
S29. 3.25
立春祭
御詠
ゆきしもを しのぎしのぎてこのはなの さくやもたらすかみのよのはる
雪霜を しのぎしのぎて兄の花の 咲やもたらす神の代の春
※兄の花=梅
明麿近詠集
S11. 5.15
018
真理
ゆきしもを しのぎしのぎてようやくに はなさくはるにあうここちすも
雪霜を 凌ぎ凌ぎて漸くに 花咲く春に逢う心地すも
S28. 3.23 春季大祭
御歌03
ゆきしもを しのぎしのぎてようやくに はなさくはるにあうここちすも
雪霜を 凌ぎ凌ぎて漸くに 花咲く春に逢ふ心地すも
地上天国47
S28. 4.25
春季大祭
御詠
ゆきずりの おみなさくらそうのたばもてり はるをたずねてきつるののみち
ゆきずりの 女桜草の束もてり 春をたづねて来つる野の路
山と水 1090
S 9. 3. 6
春 閑
ゆきづまり ゆきももどりもならぬよは しゅうまつのよのしるしなるらん
行詰り ゆきも戻りもならぬ世は 終末の世のしるしなるらん
「光」 43
S25. 1. 1
新年随詠
ゆきづまり ゆきももどりもならぬよは しゅうまつのよのしるしなるらん
行き詰り ゆきも戻りもならぬ世は 終末の世のしるしなるらん
光宝会資料
S25. 1. 1
新年御歌
祭典時05
ゆきづまり ゆきももどりもならぬよは しゅうまつのよのしるしなるらん
行詰り ゆきも戻りもならぬ世は 終末の世のしるしなるらん
地上天国13
S24.12.21
大浄化
ゆきつもる こだちにすけるにさんばの からすくろかりうるしのごとくに
雪つもる 木立にすける二三羽の 烏黒かり漆の如くに
山と水 0658
S 7.12.10
冬木立
ゆきつもる やつでのひろばおもたげに かさなりあいてにわもひそけし
雪つもる 八つ手の広葉おもたげに 重なりあひて庭面ひそけし
山と水 0740
S 8. 2. 4
雪の日
ゆきなだれ おおきおとすもよにかけて ゆきはしきりにふりつむるらし
雪なだれ 大き音すも夜にかけて 雪はしきりに降りつむるらし
山と水 0741
S 8. 2. 4
雪の日
ゆきのもに うごくものありこたつから はりどすかせばすずめなりける
雪の面に 動くものあり炬燵から 玻璃戸すかせば雀なりける
※玻璃戸=ガラス戸
山と水 0366
S 6.11.10
ゆきもどり ならぬやみじをこうみょうに てらしていざなうわがすくいかな
往き戻り ならぬ闇路を光明に 照らして誘ふ我救ひかな
地上天国22
S26. 3.25
 
ゆぎょうじに くるまをとどめもうづれば かんじゃくにしてがらんふりける
遊行寺に 車を止め詣づれば 閑寂にして伽藍古りける
明麿近詠集
S16.10.**
099箱根
熱海紀行
ゆくさきは もうもうとしてきりけむる なかをじどうしゃあやうげにきる
行く先は 濛々として霧けむる 中を自動車危げにきる
山と水 0108
S 6. 7.15
ハルナ登山
ゆくてには こうみょうみえてむねぬちに きぼうのいずみわきいづるなり
行手には 光明見えて胸ぬちに 希望の泉み湧き出づるなり
明麿近詠集
S15.12.23
062
ゆけどゆけど もりとはたけをおがわぬい あきおおらかにむさしのおおう
行けどゆけど 森と畑を小川縫ひ 秋おほらかに武蔵野をおふ
山と水 0310
S 6.10.20
武蔵野
の秋
ゆけむりに ほかげおぼろなやまのゆの よるのしじまをひとりゆにいる
湯けむりに 灯光おぼろな山の温泉の 夜のしじまを一人湯にゐる
※しじま=物音一つせず、静まりかえっていること。
山と水 1109 S 9. 5.10 温 泉
ゆけむりは とおはげやまのまえにながれ うみのよどめるいろにとけにつ
湯けむりは 遠禿山の前にながれ 海のよどめる色にとけにつ
山と水 0517 S 7. 3.10 熱 海
ゆずりはの うらはくっきりつくばいの みずにうつりてひはまだたかし
ゆづり葉の 裏葉くつきりつくばいの 水にうつりて日はまだ高し
※つくばい=茶庭などに据える手水(ちようず)鉢。
山と水 0450 S 7. 1.15
ゆずりはの みどりすがすがしあさばれの さつきのそらのしたをくぎろい
ゆづり葉の 緑清々し朝晴れの 五月の空の下をくぎろひ
※くぎろひ=区切ろい。ろいは推量の意を表す。(区切っているようだ)?
明麿近詠集S11. 4.24 015
春の訪れ
ゆだんすな めにはみえねどしんぱんの ときはひにひにせまりくるなり
油断すな 眼には見へねど審判の 時は日に日に迫りくるなり
祭典時御歌
S29. 3.23
春季大祭
御詠 16
ゆだんすな めにはみえねどしんぱんの ときはひにひにせまりくるなり
油断すな 眼には見えねど審判の 時は日に日に迫りくるなり
地上天国 59
S29. 6.15
 
ゆのまちの したしまれぬるままゆけば けわいのおみなわがそでをひく
温泉の町の 親しまれぬるままゆけば 化粧の女わが袖を引く
山と水 0117
S 6. 7.15
ハルナ
登山
ゆめとのみ おもいしこともまざまざと まこととなりぬこのごろのわれ
夢とのみ 思ひし事もまざまざと 実となりぬこのごろの吾
S28.12.23 御聖誕祭
御歌09
ゆめとのみ おもいしこともまざまざと まこととなりぬこのごろのわれ
夢とのみ 思ひし事もまざまざと 実となりぬこのごろの吾
地上天国 56
S29. 1.25
御生誕祭
御詠
ゆめとのみ おもいしこともまざまざと めにうつるおりわれはあるなり
夢とのみ 思ひし事もまざまざと 眼に映る折吾はあるなり
「栄光」 207
S28. 5. 6
 
ゆめとのみ おもいしさちのまざまざと めにみゆるなりなみだあふるる
夢とのみ 思ひし幸のまざまざと 眼に見ゆるなり涙溢るる
御讃歌集
(改)158
天国と
地獄
ゆめにだも おもおえぬかもおおいなる しんぱんのさまのおそろしきさま
夢にだも 思ほえぬかも大いなる 審判の状の恐ろしきさま
「救世」66
S25. 8.23
 
ゆめにだも おもおえぬばかりのくしきわざ おこなうわれにたもうちふさん
夢にだも 思ほへぬばかりの奇しき業 行ふ吾に誰も打ち伏さむ
地上天国25
S26. 6.25
 
ゆめにだも おもおゆるなきわがわざを まちわびにけんよのまびとらは
夢にだも 思ほゆるなき我業を 待ち佗びにけん世の真人らは
地上天国20
S26. 1.25
 
ゆめにだも おもほえぬほどうるわしき ちじょうてんごくいまきずくなり
夢にだも 思ほえぬ程美はしき 地上天国今築くなり
S27. 3.23 春季大祭
御歌06
ゆめにだも おもわぬのぞみしとげなむ やまいのなやみなきたるみよを
夢にだも 想はぬ望み仕遂げなむ 病の悩みなき足御代を
※足御代=満ち足りた世界
明麿近詠集
S18. 2. 5
146
立 春
ゆめにだも みるよしもなきうるわしき てんごくのかたはこねにつくりぬ
夢にだも 見るよしもなき美しき 天国の型箱根に造りぬ
「栄光」 163
S27. 7. 2
 
ゆめのような あめのぎんまくを つっきっていったつばめ つばめ
夢のような 雨の銀幕を つつきつていつた燕 燕
山と水 0487
S 7. 2.10
ゆらゆらと わがふねわくるうみのおもの あさのしじまにろのきしるおと
ゆらゆらと わが舟分くる海の面の 朝のしじまに艫のきしる音
山と水 0671
S 8. 1. 1
勅題
朝の海