――― 岡 田 自 観 師 の 御 歌 集 ―――

 御讃歌集(初版) 昭和23年7月1日発行 309首収録

序 文

 人も知るごとく、日本には昔から独特の文藝として和歌がある。この和歌なるものは不思議な力を有ってゐる。千言万語によっても言い表せない意味も僅か三十一文字で現し得る。しかもその人を動かす力に至っては予想外なるものがある。それらによって私は時折浮かんだ感想や道歌や神歌等の中から自選集録したのがこの著である。私は歌人ではないから、あまり頭を捻らないで、あるがままを自然に詠んだものが多いのである。ただ意を用いた点は判り易い事、品位を保つ事、言霊の美に意を注いだ事等である。

 昭和二十三年七月             著者識

     
     千 手 観 音(せんじゅかんのん)  
1 さんぜんせかい たてなおさむとかしこくも せんじゅかんのんとあれましにける
三千世界 立直さむと畏くも 千手観音と現れましにける
 
2 じゆうむげ せんじゅはおろかまんおくの みてさしのべてすくいますらむ
自由無碍 千手はおろか万億の 御手さしのべて救いますらむ
 
3 せんのみてに ぶっかをさずけせんのみめに ひかりめぐもうせそんとうとし
千の御手に 仏果を授け千の御眼に 光恵もう世尊貴し
 
4 たらちねの ははのちぶさをしたうがに よびとすがらんたまのおんてに
垂乳根の 母の乳房を慕うがに 世人縋らん玉の御手に
 
5 かしこくも せんじゅのみてをさしのべて さんかいばんれいすくわせたもう
畏くも 千手の御掌をさしのべて 三界万霊救わせ給う
 
6 せんようの みてのちからにまがかみも せそんのみまえにぬかづくなるらむ
千様の 御手の力に曲神も 世尊の御前に額くなるらむ
 
7 いとふかき なぞをひめたるかんのんの せんじゅのみてはひらかせますらむ
いと深き 謎を秘めたる観音の 千手の御掌は開かせますらむ
 
8 せんのみてに もるるはあらじうつしよに ありとしあらゆるもののいのちの
千の御掌に 漏るるはあらじ現世に ありとしあらゆるものの命の
 
9 しんらばんしょう よにことごとにけじめなく じしょいをたもうせんじゅかんのん
森羅萬象 世に悉にけじめなく 地所位を賜う千手観音
 
     
     観 音 下 生(かんのんげしょう)  
10 いとたかき おんみにありていとひくき ぼさつのみなにすくいますかも
いと高き 御身に在りていと低き 菩薩の御名に救いますかも
 
11 てんかいの しびのあるじにましませど このどすくいにあもりますかも
天界の 紫微の主に座ませど 此土救いに天降りますかも
 
12 とめるものに なみだをあたえまずしきものに ものをめぐもうかんぜおんかんも
富める者に 涙を與え貧しき者に 物を恵もう観世音かも
 
13 やおよろず しょぜんてんにんよろこびて まつろうほうざにかがやきたもう
八百万 諸善天人喜びて 服ろう宝座に輝き給う
 
14 えすがたと たがおもうらむさながらに いけますごときぼさつおろがむ
絵姿と 誰が思うらむ宛らに 生けます如き菩薩拝む
 
15 おうごんは ぶっしつのせいなりかんのんの たまのおんみはこがねなりける
黄金は 物質の精なり観音の 玉の御身は黄金なりける
 
16 おうごんの おんみのかんのんいつきなば ぶっしつゆたかにつどうなりける
黄金の 御身の観音斎きなば 物質豊かに集うなりける
 
17 みおもてを あしたゆうべにおろがみまつる ごとになやみはきえてゆくなり
御面を 朝夕べに拝み奉る 毎に悩みは消えてゆくなり
 
18 いかならむ いたつきとてもねんずれば とくいやしますかんぜおんかも
如何ならむ 病きとても念ずれば 疾く癒します観世音かも
 
19 たらちねの ははにもましてなつかしく うちあおぐかなたまのみおもて
垂乳根の 母にもまして懐しく 打仰ぐかな玉の御面
 
20 かんぜおん いつきまつりしそのひより わがいえぬちはあかるみにける
観世音 斎き奉りし其日より 我家ぬちは明るみにける
 
     
     救 世 之 光(ぐせのひかり)  
21 うばたまの やみはれにけりかんのんの たまのみひかりかがよいそめて
烏羽玉の 闇晴れにけり観音の 玉の御光輝よい初めて
 
22 かんぜおん ぼさつとねんずたまゆらに このみこのたまよみがえりけり
観世音 菩薩と念ずたまゆらに 此身此魂甦りけり
 
23 しらぬまに すくわれにけりかんのんの まことのみおしえわれききてより
知らぬ間に 救われにけり観音の 真の御教え吾聴きてより
 
24 まんがんの ふみよまずともねんずれば まことのちえをたもうかんのん
万巻の 書籍読まずとも念ずれば 真の知恵を賜う観音
 
25 のりにそれず みちにかないてとみさかゆ さちはかんのんぎょうにありける
法に外れず 道にかないて富栄ゆ 幸は観音行にありける
 
26 やおよろず かみもしょぜんもてんにんも あおぐはかんのんのだいじなりけり
八百万 神も諸善も天人も 仰ぐは観音の大慈なりけり
 
27 いとたかき みくらをあとにあもりまし このどをきよむるかんぜおんかも
いと高き 御座を後に天降りまし 此土を浄むる観世音かも
 
28 おもいきや しずのおのこのうつそみに やどかりたもうかんのんかしこし
思いきや 賤の男子の現身に 宿かり給う観音畏し
 
29 めっぽうの よをすくいますみちからは かんのんみょうちのみちからとぞおもう
滅法の 世を救います御力は 観音妙智の御力とぞ思う
 
30 たいぼうの メシヤあれなむけいしょうを ひたうちならしよびとさまさん
待望の 救主現れなむ警鐘を ひた打鳴らし世人醒さむ
 
31 おおいなる ひかりとねつをもれもなく ゆたにめぐもうかんぜおんはも
大いなる 光と熱を漏れもなく 豊に恵もう観世音はも
 
     
     天 地 開 明(てんちかいめい)  
32 よのひじり とくよしもなきひめごとの とをひらかむとかんのんあもりぬ
世の聖 解くよしもなき秘事の 扉を開かむと観音天降りぬ
 
33 かんのんの みょうちのかぎにそこふかき よろずのなぞはうちとくるならん
観音の 妙智の鍵に底深き 万の謎はうち解くるならむ
 
34 みちとせの かたきいわともかんのんの たまのおんてにうちひらくるならん
三千歳の 固き岩戸も観音の 玉の御手に打開くるならん
 
35 あめつちの もものじっそうめにうつり まよいのくものはるるうれしさ
天地の 百の実相眼にうつり 迷いの雲の晴るるうれしさ
 
36 おおかみは ときみつるまであまのとを ひらくみかぎをひめおかれませり
大神は 時満つるまで天の扉を 開く御鍵を秘めおかれませり
 
37 たちまよう さぎりはらしてかんのんの ひかりかがようときはきぬめり
立迷う 狭霧霽らして観音の 光輝よう時は来ぬめり
 
38 おおぞらに かがやくつきとひのかげは せいかんのんのほっしゅなるらん
大空に 輝く月と日の光は 聖観音の宝珠なるらむ
 
     
     金 龍 神(きんりゅうじん)  
39 しがの うみみなそこふかくかくれませし きんりゅうじんのあれましにける
志賀の 湖水底深くかくれませし 金龍神の現れましにける
 
40 ひさかたの あめのまないのやすがわら うけいにあれしやたりおめがみ
久方の 天の真奈井の八洲河原 誓約に生れし八人男女神
 
41 ぶつめつの みよをかぎりにかくろいし はちだいりゅうおうはやたりおとめなり
仏滅の 御代を限りに隠ろいし 八大龍王は八人男と女なり
 
42 きんりゅうの こんごうりきのとうとさよ あわれさたんもまつろうほかなき
金龍の 金剛力の尊さよ あわれサタンも服ろう外なき
 
43 やたりおと めただひとはしらのかんみたまと ならせこのどにいずのめのかみ
八人男と 女唯一柱の神御霊と ならせ此土に伊都能売之神
 
44 ぐせのため じゆうむげなるみひかりを まくばせたもうせいかんのんかも
救世の為 自由無碍なる御光を 間配せ給う聖観音かも
 
45 あまかけり くにかけりつつためしなき みちからふるわむきんりゅうじんはも
天翔り 国馳けりつつ例しなき 御力揮わむ金龍神はも
 
     
     神 の 御 光(かみのみひかり)  
46 そのころを かえりみすればおそろしも やみじつえなくさまよいしわれ
其頃を 顧みすれば恐ろしも 闇路杖なく彷いし吾
 
47 だんがいの ゆくてにあるがしられけり かみのひかりにめぐまれてより
断崖の 行手にあるが知られけり 神の光に恵まれてより
 
48 ふきすさぶ よあらしとてもわすれけり かみのみひかりにつつまれてより
吹き荒ぶ 世嵐とても忘れけり 神の御光に包まれてより
 
49 あまてらす つきのひかりもひのかげも すのおおかみのおんめなるらむ
天照す 月の光も日の光も 主の大神の御眼なるらむ
 
50 めしいほど はかなきものはよにあらじ ちかどのたからしるよしもなく
盲ほど 儚きものは世にあらじ 近処の宝知るよしもなく
 
51 かんのんの ひかりにまなこさめぬれば こがねとみしはあらがねのつち
観音の 光に眼醒めぬれば 黄金と見しは荒金の土
 
52 ひとごとと おもいしこともいつしかに わがみのうえにふりかかるよや
人事と 思いし事も何時しかに 我身の上にふりかかる世や
 
53 うきぐさの ところさだめぬわがこころ あわれとすくいませしかんのん
浮草の 処定めぬ我心 愁れと救いませし観音
 
54 せいしんの かがみによらでいかにして もものさかごとわからざらめや
正神の 鏡によらで如何にして 百の逆事解らざらめや
 
55 かんのんの みすくいなくばわれはいま そこなきぬまになやみつづけむ
観音の 御救いなくば吾は今 底なき沼に悩みつづけむ
 
56 いまさらに すぎにしことどもいわざらむ わがおろかさのとがにありせば
今更に 過ぎにし事どもいわざらむ 我愚かさの尤にありせば
 
57 ちからなく つえなくともしびもたぬみの かみのみさちにすくわれしいま
力なく 杖なく燈火有たぬ身の 神の御幸に救われし今
 
58 はるぬのに あそぶがごとくうらたのし かみのれいいにつつまるるみは
春ぬ野に 遊ぶが如く心楽し 神の霊衣に包まるる身は
 
     
     道 歌(一)(どうか1)  
59 つたなくも まことにいずることのはは ひとをうごかすちからありけり
拙なくも 誠に出ずる言の葉は 人を動かす力ありけり
 
60 いうべきと いわでよきことあるよなり みちにあるものこころせよゆめ
言うべきと 言わでよき事ある世なり 道にあるもの心せよゆめ
 
61 ささやかな こととしいえどゆるがせに せぬひとにしておおきことなる
小やかな 事としいえど忽せに せぬ人にして大き事成る
 
62 じょうこんの ひとのしるしはまじわりて なにかはしらにゆかしさほのめく
上魂の 人のしるしは交わりて 何かは知らに床しさほのめく
 
63 こころよきは しろきをしろとそのままに のることのはをきくにぞありける
快きは 白きを白とそのままに 宣る言の葉を聞くにぞありける
 
64 いささかの くもりもこうみょうかいにては もののさやりになるとしれかし
聊かの 曇りも光明界にては ものの障りになると知れかし
 
65 えんまんに ものをおさむるひとにして もろもろのひとしたいくるなり
円満に ものを治むる人にして 諸々の人慕い来るなり
 
66 おおいなる のぞみのためにいとちさき ことにもわれはこころおくなり
大いなる 望みの為にいと小さき 事にも吾は心おくなり
 
67 ものごしも のることたまもこころよき ひとこそかんのんぎょうにかなえり
物腰も 宣る言霊も快き 人こそ観音行に叶えり
 
68 いかならん こともこらえてときをまつ ひとこそかんのんぎょうのひとなり
如何ならむ 事も耐えて時を待つ 人こそ観音行の人なり
 
     
     道 歌(二)(どうか2)  
69 ただひとの めにはよしとしうつることも かみのみむねにかなわぬことあり
凡人の 眼には善しとし映る事も 神の御旨に適わぬ事あり
 
70 ちいさなる ひとのまなこにうつらめや おおあめつちをただすしぐみの
小さなる 人の眼に映らめや 大天地を釐す仕組の
 
71 たえがたき いかりおさゆるちからこそ かんのんりきのあらわれにぞある
堪え難き 怒り制ゆる力こそ 観音力の顕れにぞある
 
72 ちいさなる まなこをもてるはかなさは おおいなるみちみうしなうなり
小さなる 眼をもてる儚さは 大いなる道見失うなり
 
73 みぎによらず ひだりによらずなかみちを あゆむぞかんのんぎょうにかなえり
右に倚らず 左に偏らず中道を 歩むぞ観音行に適えり
 
74 かむながら かみのまにまにすすむこそ うきのよやすくわたるみちなり
惟神 神のまにまに進むこそ 憂きの世安く渡る道なり
 
75 たまきはる いのちはかみのものにあり かみにそむきてさかえうべきや
魂機張る 生命は神のものにあり 神に叛きて栄え得べきや
 
76 いかならむ こともこらえてさりげなく ほほえみあしろうひととなれかし
如何ならむ 事も耐えてさりげなく 微笑みあしろう人となれかし
 
     
     圓 満 具 足(えんまんぐそく)  
77 おおみたまは かみにましましみすがたは みほとけにませるせいかんのんかも
大霊魂は 神に在まし御姿は 御仏にませる聖観音かも
 
78 あこがれて かみながたちのまちのぞむ みろくはやがてげしょうしますらむ
憧がれて 僧侶たちの待ち望む 彌勒はやがて下生しますらむ
 
79 てんりおうの  みことはてんりんぼさつにて せいかんのんのけしんとぞおもう
天理王の 尊は転輪菩薩にて 聖観音の化身とぞ思う
 
80 えいこうの くもよりくだるきりすとに よろこびいさむとききぬるらむ
栄光の 雲より降るキリストに 歓び勇む時来ぬるらむ
 
81 わがことば みみかたむくるひとひにつきに ふえゆくさまのたのもしきかな
吾言葉 耳傾くる人日に月に 殖えゆくさまの楽もしきかな
 
82 えんまんに さんじゅうさんそうそなえます とうときみすがたおろがむあさなさ
円満に 三十三相具えます 尊き御姿拝む朝なさ
 
     
     観 音 妙 智 力(かんのんみょうちりき)  
83 かんぜおん いつきまつりていえぬちは まひるまのごとあかるくなりぬ
観世音 斎き奉りて家ぬちは 真昼間の如明るくなりぬ
 
84 やみのなき あかるきいえにやまいがみ まがつかみなどさやるべしやは
闇のなき 明るき家に病神 曲津神など障るべしやは
 
85 はずかしき わがみにあれどまごころを ささぐるひとのふえゆくたのしさ
恥しき 吾身にあれど真心を 捧ぐる人のふえゆく楽しさ
 
86 かしこくも かんぜおんぼさつはやおよろず かみやほとけのひじりにおわさん
畏くも 観世音菩薩は八百万 神や仏の聖に在さん
 
87 くしびなる みょうちのちからうつそみの よびとにめぐもうじひのみほとけ
奇びなる 妙智の力現身の 世人に恵もう慈悲の御仏
 
     
     病 な き 世 界(やまいなきせかい)  
88 いそのかみ ふるきかみよはもろびとの ことぶきひゃくをこえしとぞいう
石の上 古き神代は諸人の 寿百を越えしとぞいう
 
89 ひとのよわい ひゃくをこえたるふるきよは くすしといふものあらざりしならむ
人の齢 百を越えたる古き世は 薬しといふものあらざりしならむ
 
90 すこやかに ひといかしゆくわざにこそ かみのめぐみのちからみゆめり
健かに 人生かしゆく術にこそ 神の恵みの力見ゆめり
 
91 ためしなき ことにこそあれやまいちよう もののねをたつかんのんりきかも
例しなき 事にこそあれ病ちよう 物の根を絶つ観音力かも
 
92 こころいやし からたまいやしよをいやす せいかんのんのおおきみちから
心癒し 肉体癒し世を医す 聖観音の大き御力
 
93 やむひとの なきよたてんといづのめの かみはみちからふるわせたもうも
病む人の 無き世樹てむと伊都能売の 神は御力揮わせ給うも
 
94 つかれたるものよ とくとくきませよと たまのおんてにまねきますかも
疲れたる者よ とくとく来ませよと 玉の御手に招きますかも
 
95 やまいなど あるべきはずはよもあらじ まことのみちをふむひとにして
病など あるべき筈はよもあらじ 誠の道を履む人にして
 
96 いたつきを おそるなつもりしつみけがれ きよむるかみのみめぐみなりせば
病きを 恐るな積りし罪穢 浄むる神の御恵みなりせば
 
97 やむひとの さわなるいまのうつしよを すくうかんのんのみこころとうとし
病む人の 澤なる今の現世を 救う観音の御心尊し
 
     
     地 上 天 国(ちじょうてんごく)  
98 やまいなく ひんなくいさかいなきみよに たてなおさむとするわがねがいかな
病なく 貧なく争い無き御代に 建直さむとするわが願いかな
 
99 げいじゅつの たかきにおいはひとのよの いともとうときものにぞありける
芸術の 高き匂いは人の世の いとも貴きものにぞありける
 
100 うるわしき はなにみいりておもうかな かみのめぐみのいともふかきを
美わしき 花に見入りて意うかな 神の恵みのいとも深きを
 
101 ふるきもの みなくずおるるよにいまや あたらしきものあれなむとすも
旧きもの 悉くずおるる世に今や 新しきもの生れなむとすも
 
102 とこしえに このどのうえにうちたたむ あくがれまちしゆめのてんごく
永久に 此土の上に打樹たむ あくがれ待ちし夢の天国
 
103 いそのかみ ふることぶみにもいまだみぬ ちじょうてんごくあれなむとすも
石の上 古事記にも未だ見ぬ 地上天国生れなむとすも
 
104 ひとのよに ためしとてなきおおいなる のぞみにもゆるわれにぞありける
人の世に 例しとてなき大いなる 望みに燃ゆる吾にぞありける
 
105 きりすとも しゃかもたたえむおおいなる わがかむわざをかくりよにいまして
キリストも 釈迦も讃えむ大いなる わが神業を幽世に居まして
 
106 くしびなる このかむわざにくらぶもの ひろきうつしよにあらじとぞおもう
奇びなる この神業に比ぶもの ひろき現世にあらじとぞ思う
 
     
     三 尊 の 彌 陀(さんぞんのみだ)  
107 さんぞんの みだとはかんのんしゃかあみだ みっつのそんじゃをたたえしみななる
三尊の 弥陀とは観音釈迦阿弥陀 三つの尊者を称えし御名なる
 
108 さんぞんの みだのみちからひとつみに そなえみすくうせいかんのんかも
三尊の 弥陀の御力一つ身に 具え御救う聖観音かも
 
109 ひだりには しゃくそんみぎにみだにょらい せいかんのんはまなかにおわすも
左には 釈尊右に弥陀如来 聖観音は真中に在すも
 
110 しゃかみだに すくいよさしてみちとせを かくろいませしかんのんかしこし
釈迦弥陀に 救任さして三千年を 隠ろいませし観音畏こし
 
111 ほうりんを てんいましましむげこうを あまねくたもうせそんとうとき
法輪を 転移ましまし無碍光を 普く賜う世尊貴き
 
112 まにのたま にょいのほっしゅをそなえまし さんがいばんれいすくはせたもう
麻邇の玉 如意の宝珠をそなえまし 三界万霊救はせ給う
 
113 おうしんの みろくにおわすやみすがたは おのこおみなのけじめとてなき
応身の 弥勒に在すや御姿は 男女の差別とてなき
 
114 さいほうは みだのくになりとうほうは せいかんのんのたまのふるさと
西方は 弥陀の国なり東方は 聖観音の霊の故郷
 
     
     金 剛 胎 蔵(こんごうたいぞう)  
115 たいぞうかい いでますみろくをひたすらに まちあくがるるしょぜんてんにん
胎蔵界 出でます弥勒を只管に 待ちあくがるる諸善天人
 
116 こんごうかいに みろくげしょうをまちのぞむ しょぜんしょぶつややほよろずかみ
金剛界に 弥勒下生を待ち望む 諸善諸仏や八百万神
 
117 たいぞうの みろくあれましぶっせつの もろもろのなぞとくるうれしさ
胎蔵の 弥勒生れまし仏説の 諸々の謎解くる嬉しさ
 
118 とうかいの ふようのみねにときまちし このはなひめはかんのんにおわせり
東海の 芙蓉の嶺に時待ちし 木の花姫は観音に在せり
 
119 よのみだれ ただすちからはかんぜおん ぼさつのほかにあらじとぞおもう
世の乱れ 正す力は観世音 菩薩の外にあらじとぞ思う
 
120 いかならむ つみもゆるさせいかならむ つみもとがむるあめつちのかみ
如何ならむ 罪も赦させ如何ならむ 罪も尤むる天地の神
 
121 あずさゆみ はるたちそめてこのはなの かおりはよものくにににほわむ
梓弓 春立ち初めて兄の花の 香は四方の国に匂わむ
 
     
     法 の 華(のりのはな)  
122 はちまんと しせんのきょうもんちぢむれば しんにょのにじにつくるなりけり
八万と 四千の経文約むれば 真如の二字に尽くるなりけり
 
123 ほけきょうの はなのうてなにのりのみは かんのんふもんぼんにやどれる
法華経の 花の台に教の実は 観音普門品に宿れる
 
124 かんのんの みなねんずればいぶかしも わがこころねのすがすがしもよ
観音の 御名念ずれば訝かしも わか心根の清すがしもよ
 
125 くしびなり ああくしびなりねぎごとの ただしかりせばかなえますなり
奇びなり 噫奇びなり願事の 正しかりせば叶えますなり
 
126 ゆきくれて みちにまよえるこひつじを すくわせたもうかんのんのみて
ゆきくれて 道に迷える小羊を 救わせ玉う観音の御手
 
127 のりのはな ちりてむすびしひとつみは せいかんのんのみたまなるらむ
法の華 散りて結びし一つ実は 聖観音の身魂なるらむ
 
128 うないごも おにをもひしぐたけきおも じひのおんめにしたいよるかも
うない兒も 鬼をも拉ぐ猛き男も 慈悲の御眼に慕い寄るかも
 
     
     救 の 力(すくいのちから)  
129 かりこもの みだれたるよをうちきりて うましこのどにならせますらむ
苅菰の 乱れたる世を打断りて 美し此土にならせますらむ
 
130 いくとせの ながきをもものひじりたち ちからかぎりによをすくわむとせしも
幾歳の 長きを百の聖達 力限りに世を救わむとせしも
 
131 よをすくう ときのちからはかむながら かみのみむねにありとこそしれ
世を救う 時の力は惟神 神の御旨にありとこそ知れ
 
132 おおかみの まにのちからによらざれば まがつかみにはかたんすべなし
大神の 麻邇の力に依らざれば 曲津神には勝たむすべなし
 
133 ちからなり あいなりじひなりときじくに いっさいしゅじょうのすくいねぐなり
力なり 愛なり慈悲なり非時に 一切衆生の救願ぐなり
 
134 ぜったいの すくいのちからふるいなば さんがいばんれいよみがえるらむ
絶対の 救の力揮いなば 三界萬霊蘇るらむ
 
135 おうしんの かんのんならでいかにして じゆうむげなるちからふるわめや
応身の 観音ならで如何にして 自由無碍なる力揮わめや
 
136 かんのんの ちからというはちえがくに とけぬふしぎのものにぞありける
観音の 力というは知恵学に 解けぬ不思議のものにぞありける
 
137 ためしなき ことにこそあれやみのなき だいせんせかいのあれまさんとは
例しなき 事にこそあれ闇のなき 大千世界の生れまさむとは
 
     
     観 音 行(かんのんぎょう)  
138 あめつちの もものうごきのくるいなきは かんのんぎょうのかがみなりけり
天地の 諸の動きの狂いなきは 観音行の鏡なりけり
 
139 れいせつと じゅんじょをまもることこそは かんのんぎょうのかなめなるらむ
礼節と 順序を守る事こそは 観音行の要なるらむ
 
140 かんのんぎょうの まったきひとはいささかの いつわりごともこのまざるなり
観音行の 完き人は些かの 佯り言も好まざるなり
 
141 たれもかも したいてくなりおのづから かんのんぎょうのとくになびかい
誰も彼も 慕いて来なり自ら 観音行の徳に靡かい
 
142 いかならむ わざわいとてもかんのんぎょうに いればいつしかきえてあとなし
如何ならむ 災とても観音行に 入ればいつしか消えて跡なし
 
     
     人 の 道(ひとのみち)  
143 なにごとも ほどのいちじをまもりなば たやすかるべきこのよなりける
何事も 程の一字を守りなば 容易すかるべき此世なりける
 
144 まがびとは よわきものなりもろもろの つみにうちかつちからなければ
曲人は 弱き者なりもろもろの 罪に打克つ力なければ
 
145 およそよに つよきはおのれをうちわすれ ただしきみちをつらぬくひとなり
凡そ世に 強きは己を打忘れ 正しき道を貫く人なり
 
146 ししんなく ひたすらみちにいそしめば おおみめぐみをゆたにうくなり
私心なく 只管道に励めば 大御恵を豊に享くなり
 
147 はくあいの みちよそにしてかんのんの ぎょうはあらじなこころせよみな
博愛の 道よそにして観音の 行はあらじなこころせよみな
 
148 ひたすらに まことのみちをふみゆけば かんのんぎょうのかどにいるなり
只管に 誠の道を履みゆけば 観音行の門に入るなり
 
149 ゆかしけれ わがみのことをあとにして ひとのよかれとねがうこころの
床しけれ 吾身の事を後にして 他人の良かれと希う心の
 
150 みちのため よのためひとのためのみを ときじくおもうまびととなれかし
道の為 世の為人の為のみを 非時おもう真人となれかし
 
151 ぐせのため ぼさつとならせたまいしは だいじだいひにおわせばなりける
救世の為 菩薩とならせ給いしは 大慈大悲に在せばなりける
 
     

 

     
     菩 薩 行(ぼさつぎょう)  
152 さもしきは おのがてがらをよのひとに しめさむとするこころにぞある
さもしきは 己が手柄を世の人に 示さむとする心にぞある
 
153 たかきひくきの けじめとてなくねもごろに おしうひとこそみむねにかなわむ
高き低きの 差別とてなく懇ろに 誨う人こそ御旨に叶わむ
 
154 ちのうえの いきとしいけるものみなは かんのんりきによみがえるらむ
地の上の 生きとし生けるもの悉は 観音力に蘇るらむ
 
155 ありがたし ああありがたしみすがたを うちあおぐごとこころなごむも
有難し ああ有難し御姿を 打仰ぐ毎心和むも
 
     
     感 謝 報 恩(かんしゃほうおん)  
156 たたえても たたえつくせぬみめぐみに むくわむすべのなきぞかなしき
讃えても 称え尽せぬ御恵に 酬わむ術のなきぞ悲しき
 
157 みめぐみに むくいまつらでおくべきや いきしこのみのさちをおもえば
御恵に 報い奉らでおくべきや 生きし此身の幸を思えば
 
158 わがいのち よみがえるさえうれしきに いやしのわざまでゆるされにける
我生命 甦るさえ嬉しきに 医しの業まで許されにける
 
159 いのちさえ あやうきほどのいたつきも いえてめぐみにひたるうれしさ
生命さえ 危うき程の病きも 癒えて恵みに浸る嬉しさ
 
160 ちからなき みにしあれどもかかぶれる かんのんりきによびといやさむ
力無き 身にしあれども蒙ぶれる 観音力に世人医さむ
 
161 みめぐみの まんぶんいちにとどかねど まことのみしるしうけさせたまえ
御恵の 万分一に届かねど 誠の御しるし受けさせ給え
 
162 みめぐみに むくゆすべなしひとのよの たからといえどかぎりありせば
御恵に 報ゆ術なし人の世の 宝といえど限りありせば
 
163 つみぶかき このみもとがめたまわずて おおいなるさちゆたにめぐもう
罪深き 此身も尤め給わずて 大いなる幸豊に恵もう
 
164 いのちほど とうときものはよにあらじ ひたにすがりてよわいのばさむ
生命程 尊きものは世にあらじ ひたに縋りて齢延ばさむ
 
165 いたつきの いやされたりしうれすさよ いのちにかえるたからなければ
病きの 医やされたりし嬉しさよ 生命に代える宝なければ
 
166 たまきはる いのちたまいしみほとけに むくわでおかむわがよのかぎり
魂機張る 生命賜いし御仏に 酬わでおかむ我世の限り
 
     
     御 祭(みまつり)  
167 かんぜおんぼさつの とうときおんみたま むかえまつりしきょうのよろこび
観世音菩薩の 尊き御霊魂 迎え奉りし今日の喜び
 
168 かんぜおんぼさつ かしこしまたのみなは こうみょうにょらいともうしまつるも
観世音菩薩 畏し又の御名は 光明如来と申し奉るも
 
169 こうみょうにょらい いつきまつりしきょうよりぞ わがいえぬちはあかるかるらむ
光明如来 斎き祭りし今日よりぞ わが家ぬちは明るかるらむ
 
170 きょうよりは もものわざわいきえぬらむ こうみょうにょらいいつきまつりて
今日よりは 諸の災い消えぬらむ 光明如来斎き祭りて
 
171 ぬばたまの やみもあさひのさしそめて きゆるがごとしわがいえぬちは
奴羽玉の 暗も朝日の射し初めて 消ゆるがごとしわが家ぬちは
 
172 いたつきの いえしよろこびいやまして とうときみたまいつくうれしさ
病きの 癒えし喜びにいや増して 尊き御霊斎く嬉しさ
 
173 くらかりし このうつしよもいつかしら あかるくなりぬわれすくわりてより
暗かりし 此現世も何時かしら 明るくなりぬ吾救われてより
 
174 かんぜおんぼさつの とうときみめぐみに すがりていきんきょうをさかいに
観世音菩薩の 貴き御恵に 縋りて生きむ今日を境に
 
175 かぎりなき だいじだいひにおわします こうみょうにょらいのとうときみこころ
限りなき 大慈大悲に在します 光明如来の尊き御心
 
     
     観 音 力(かんのんりき)  
176 おおけなしと おもえどしずのわがふせや まもらせたまえだいじのみほとけ
おおけなしと 思えど賤の我伏屋 守らせ給え大慈の御仏
 
177 うしといいし よはすぎにけりよのひとよ たのしきみよはいまきたらむとすも
憂しといいし 世は過ぎにけり世の人よ 楽しき御代は今来たらむとすも
 
178 いやはてに よのいたつきをなみさむと かんのんりきのあらわれにける
いやはてに 世の病きを無みさむと 観音力の表われにける
 
179 かんのんの ちからというはひみずつち さんみいったいのちからにぞある
観音の 力というは火水土 三位一体の力にぞある
 
180 あなうれし のぞみをたちしよにしあれど かんのんしりてゆのぞみめばえぬ
あな嬉し 望みを絶ちし世にしあれど 観音知りてゆ希望み芽生えぬ
 
     
     黎 明(れいめい)  
181 ながきよの やみのとばりもしずしずと あけはなれけりまなこさませよ
長き世の 暗の帳もしずしずと 明け放れけり眼さませよ
 
182 いまわしき ことのみおおきうつしよは やみのとばりのまだのこるなり
忌まわしき 事のみ多き現世は 暗の帳の未だ残るらむ
 
183 うばたまの やみよになれしひとのめに まばゆかるらむかみのひかりは
烏羽玉の 暗世に慣れし人の眼に 眩ゆかるらむ神の光は
 
184 れいめいに きづくひとこそまことなる まなこをもてるしるしなりける
黎明に 気付く人こそ真なる 眼をもてる徴なりける
 
     
     大 御 恵(おおみめぐみ)  
185 すこやかに いまわれあるはおおけなくも せそんがあつきめぐみとぞおもう
健かに 今我在るはおおけなくも 世尊があつき恵みとぞ思う
 
186 うつしよの いきとしいけるものみなは かみのめぐみにもるるはあらじ
現世の 生きとし生けるものみなは 神の恵みに漏るるはあらじ
 
187 せんおくの とみにもましてうれしきは つつがなみけるみにしありけり
千億の 富にも増して嬉しきは 恙なみける身にしありけり
 
188 たかどのに にしきまとうもいたつきに もだえるひとぞあわれはかなき
高殿に 錦纏うも病きに 悶える人ぞ哀れはかなき
 
189 かんぜおん ぼさつのめぐみなかりせば このみこのたまほろびしなるらめ
観世音 菩薩の恵なかりせば 此身此魂滅びしなるらめ
 
190 むらきもの いのちたまいしみめぐみを うちわすれなばけものにひとしき
村肝の 生命賜いし御恵を うち忘れなば獣に等しき
 
191 ひとのみの とうときわけはもものおん こころにきざみてわすれねばなり
人の身の 尊き訳は諸の恩 心に刻みて忘れねばなり
 
192 たらちねの ちちははなくばうつしよに このみこのたまあらじとぞおもう
垂乳根の 父母なくば現世に 此身此魂あらじとぞ思う
 
193 はらからと むつみあうみとなりにける かみのみひかりかかぶりてより
同胞と 睦み合う身となりにける 神の御光蒙ぶりてより
 
     
     更 生(こうせい)  
194 つつがなく ただあるさえもおおけなきに すくいのみちにいりしうれしさ
恙なく ただ在るさえもおおけなきに 救の道に入りし嬉しさ
 
195 たたえても たたえつくせぬおおみさちを つたなきうたもてよまるべしやは
讃えても 称え尽せぬ大御幸を 拙き歌もて詠まるべしやは
 
196 よをのろい ひとをうらみしそのころの こころのくもりはきえてあとなき
世を呪い 人を怨みし其頃の 心の曇は消えて跡なき
 
197 くらかりし こころのそらもさながらに まひるまのごとはれしうれしさ
暗かりし 心の空も宛らに 真昼間の如晴れし嬉しさ
 
198 おおまえに ぬかずくごとになみだしぬ すくわれたりしこのみおもえば
大前に 額く毎に涙しぬ 救われたりし此身思えば
 
199 すくわれし さちをおもえばみをつくし こころくだきてむくわでおかめや
救われし 幸を思えば身を尽し 心砕きて報わでおかめや
 
200 いそのべの まさごにひとしきわがみなれど うけさせたまえまことのしるしを
磯の辺の 真砂に等しき我身なれど 受けさせ賜え誠のしるしを
 
201 ちからなき みにしあれどもよのために つくさせたまえいずのめのかみ
力なき 身にしあれども世の為に 尽させ賜え伊都能売之神
 
     
     最 後 の 救(さいごのすくい)  
202 くさぐさの おしえあれどもまったきの おしえはいまだあらじとぞおもう
種々の 教あれども完きの 教は未だあらじとぞ思う
 
203 ものしりに あらねばとけぬふみをもて あまねくよびとすくわるべしやは
物識に あらねば解けぬ書物をもて 遍く世人救わるべしやは
 
204 まつぶさに いかにりをときつくすとも しるしなければひとはたらわじ
ま備さに 如何に理を説き尽すとも 徴しなければ人は足らわじ
 
205 よのひとを すくうちからはりにあらず みえざるかみのちからにぞあらむ
世の人を 救う力は理にあらず 見えざる神の力にぞあらむ
 
206 とうとけれ ああとうとけれかんぜおん ぼさつはいきとしいけるみなをすくわむ
尊とけれ 嗚呼尊とけれ観世音 菩薩は生きとし生ける悉を救わむ
 
207 いそのかみ ふることぶみにもみあたらぬ くしきちからぞみょうちりきなる
石の上 古事記にも見当らぬ 奇しき力ぞ妙智力なる
 
208 かがやける こんごうせきもめしいには はまのまさごとみられがちなる
耀やける 金剛石も盲には 浜の真砂と見られがちなる
 
209 あいをとき じひさとすとておこないの ともなわざればはまのまつかぜ
愛を説き 慈悲諭すとて行の 伴なわざれば浜の松風
 
210 しゃかくじや やそのおしえをいやはてに いかさんとするかんぜおんかも
釈迦孔子や 耶蘇の教をいやはてに 生かさんとする観世音かも
 
     
     大 慈 大 悲(だいじだいひ)  
211 ながきよの つみあやまちをねもごろに さとすせそんのめぐみとうとし
長き世の 罪過ちをねもごろに 諭す世尊の恵み尊し
 
212 わだのはら そこいもしれぬいとふかき めぐみにおにもなみだするらむ
和田の原 底いも知れぬいと深き 恵に鬼も涙するらむ
 
213 いぶかしむ なかれよびとよおもうこと ならぬはこころにくもりあればなり
訝かしむ 勿れ世人よ思う事 成らぬは心に曇あればなり
 
214 ささやかな ひとのちえもてためしなき ぐせのみわざのわからざらめや
小やかな 人の智恵もて例しなき 救世の御業の判らざらめや
 
215 とことわに ふゆなきよるなきてんごくに たまやすませむはやきたれかし
永遠に 冬なき夜なき天国に 魂安ませむはや来れかし
 
     
     大 審 判(だいしんぱん)  
216 いくちとせ つもりつもりしさんがいの けがれきよむるときぞきぬらむ
幾千歳 積りつもりし三界の 穢浄むる時ぞ来ぬらむ
 
217 ひとみずの せんれいなくばけがれにし ひとのこのよはほろぶほかなき
火と水の 洗霊なくば汚れにし 人の此世は滅ぶ外なき
 
218 よるのおわり きつるをしらでゆめさめぬ ひとこそよにもあわれなりける
夜の終り 来つるを知らで夢醒めぬ 人こそ世にも憐れなりける
 
219 たかきひくきの けじめさえなくおおかみは さばきたまわむよぞいかすため
高き低きの 差別さえなく大神は 裁き給わむ世ぞ生かす為
 
220 あめつちの まことのみちをまもるより ほかにすべなしつみおおきみの
天地の 真の道を守るより 外に術なし罪多き身の
 
221 やすらけき うましのみよはたてられむ きよくただしきこのちのうえに
安らけき 美しの御世は建てられむ 清く正しき此地の上に
 
222 おごそかな かみのさばきにゆるさるる ひとにこそなれみたまきよめて
厳かな 神の審判に許さるる 人にこそなれ身霊清めて
 
     
     夜 の 終 り(よるのおわり)  
223 うばたまの よるのおわりとなりにけり はやひんがしにあかときのかね
烏羽玉の 夜の終りとなりにけり はや東にあかときの鐘
 
224 はやすでに とこやみのよのすぎけるを しらでまよえるこひつじあわれ
はや已に 常暗の夜の過ぎけるを 知らで迷える小羊あわれ
 
225 ほのぼのと よのれいめいはきつるなり ひがしのはてにまなことどめそ
ほのぼのと 世の黎明は来つるなり 東の果に眼とどめそ
 
226 よるのおしえ よるのもろもろはすみにけり こうみょうせかいのきたらんとして
夜の教 夜のもろもろは済みにけり 光明世界の来たらんとして
 
227 つみけがれ かくしごとなどうちたえぬは とこやみのよののこればなりけり
罪穢 秘し事などうち絶えぬは 常暗の夜の残ればなりけり
 
228 まひるびの あかるきみよにいかにして かくしごとなどよもあらめやは
真昼日の 明るき御代に如何にして 隠し事などよもあらめやは
 
229 つきのよの おぐらきかげにもろもろの つみやけがれのあるるぞせんなし
月の夜の 小暗き陰に諸々の 罪や穢の生るるぞせんなし
 
230 あめがした むげのひかりをまくばりつ てんりんぼさつはしゅじょうすくわむ
天ヶ下 無碍の光を間配りつ 転輪菩薩は衆生救わむ
 
231 こうみょうにょらい まばゆきひかりをなごめさせ よにかんのんとけげんしませり
光明如来 まばゆき光を和めさせ 世に観音と化現しませり
 
232 ひかりなごめ ちりにまみれてすくいます だいじだいひのかんぜおんかも
光和め 塵に同れて救います 大慈大悲の観世音かも
 
233 つみをとわず すぎごととがめずすくいます だいじだいひのかんのんしんかな
罪を問わず 過事尤めず救います 大慈大悲の観音心かな
 
     
     朝 明(あさあけ)  
234 ほのぼのと ひんがしのそらあかるみて れいめいつぐるかけどりのこえ
ほのぼのと 東の空明るみて 黎明告ぐる家鶏鳥の声
 
235 いくちとせ あくがれまちしこうみょうの かがやくみよはいまきたらんとすも
幾千歳  あくがれ待ちし光明の 輝く御代は今来たらんとすも
 
236 やみのなき みよになやみのあるべしや まがのさやらむすきのなければ
闇の無き 御代に悩みのあるべきや 曲の障らむ隙のなければ
 
237 ふゆのよは はやすぎさりてはなわらい ももとりうたうはるはきぬめり
冬の世は はや過ぎ去りて花笑い 百鳥歌う春は来ぬめり
 
238 よるのやみに なれしもろびとこころせよ まひのひかりにまなこくらまむ
夜の暗に 慣れし諸人心せよ 真陽の光に眼くらまむ
 
239 のきしたの すずめのこえもいさましし あさひのひかりさしそめてより
軒下の 雀の声も勇ましし 朝日の光射し初めてより
 
240 あけがらす なくねにみればそらあかく そめてかがようあさひこのかげ
明烏 啼く音に見れば空紅く 染めてかがよう朝日子の光
 
241 あだぐもは とおのきにけりひさかたの みそらにてれるおおきひのかげ
仇雲は 遠退きにけり久方の 御空に照れる大き日の光
 
     
     改 心(かいしん)  
242 おおかみの つくりたまいしあめつちの やみにいつまでとざさるべしやは
大神の 造り給いし天地の 闇にいつまで閉ざさるべしやは
 
243 だいこうみょう せかいというはくもりなき すいしょうせかいのさまをいうなり
大光明 世界というは曇りなき 水晶世界のさまをいうなり
 
244 おのもおのも まことごころにたちかえり かみのひかりにたまてらせかし
おのもおのも 誠心に立還り 神の光に魂照らせかし
 
245 もろびとの こころのいわとひらくれば このよのやみはうちきゆるらむ
諸人の 心の岩戸開くれば 此世の闇は打消ゆるらむ
 
246 かみほとけ いつきおろがむこころこそ いわとひらけししるしなりけり
神仏 斎き拝がむ心こそ 岩戸開けししるしなりけり
 
247 ひとのちから いとどよわきをしりてより かみをおろがむわれとなりけり
人の力 いとど弱きを知りてより 神を拝む吾となりけり
 
248 かみをちからに まことのつえもてすすむみは よにおそるものなきをしりけり
神を力に 誠の杖もて進む身は 世に怖るものなきを知りけり
 
     
     無 我(むが)  
249 みもたまも すみきよまりしひとにして なやみのときもやすくこえなむ
身も魂も 澄み清まりし人にして 悩の時も安く越えなむ
 
250 もののよく ほどほどにせよこえがたき なやみきぬればいかにとやせむ
物の慾 程ほどにせよ越え難き 悩み来ぬれば如何にとやせむ
 
251 いかならむ なやみのひにもうごなわじ まことひとつにすすみゆくみは
如何ならむ 悩みの日にもうごなわじ 誠一つに進みゆく身は
 
252 しゅうちゃくと きりなきよくのしがらみに みもたましいもほろびゆくなり
執着と 限りなき慾の柵に 身も魂も滅びゆくなり
 
253 はかなきは あすをもしらぬさだめもつ ひとのきりなきよくにこそあれ
儚なきは 明日をも知らぬ運命もつ 人の限りなき慾にこそあれ
 
254 ただわがみ よかれのこころにわざわいの たねまくひとぞあわれなりけり
唯我身 よかれの心に災いの 種播く人ぞ憐れなりけり
 
     
     覚 醒(かくせい)  
255 ものにのみ たよりしことのおろかさを よびとさとらむときはきにける
物にのみ 頼りし事のおろかさを 世人悟らむ時は来にける
 
256 ちかみくる ただしきみよをしらずして いまだまがことたくむあわれさ
近み来る 正しき御代を知らずして 未だ曲事企む哀れさ
 
257 あやまれる みちやこころにきづかずば やがてほろびむかみのさばきに
誤れる 道や心に気付かずば やがて滅びむ神の審判に
 
258 いくちとせ かかりてみちをくるわせし まがつほろぶるときはきにけり
幾千歳 かかりて道を狂わせし 曲津滅ぶる時は来にけり
 
259 あやうきは まがのとりこになりながら いまだめざめぬひとのゆくすえ
危きは 曲の俘虜になりながら 未だ目覚めぬ人の行末
 
     
     水 晶 世 界(すいしょうせかい)  
260 おおかみは あめつちももをすみきよめ すいしょうせかいをうちたてますらむ
大神は 天地諸を澄み清め 水晶世界を打樹てますらむ
 
261 よのけがれ きよめてもものくるいため ただしきみよをたつるおおかみ
世の穢 浄めて諸の狂い矯め 正しき御代を建つる大神
 
262 よきひとの よろこびあしきひとなげく ただしきみよのきつるうれしさ
善き人の 喜び悪しき人歎く 正しき御代の来つる嬉しさ
 
263 ちりほどの つみやけがれもかくされぬ みよをすいしょうせかいというなる
塵程の 罪や穢も匿されぬ 御代を水晶世界というなる
 
264 くもひとつ かくすよしなきおおぞらは すいしょうせかいのすがたなるらむ
雲一つ 隠すよしなき大空は 水晶世界の姿なるらむ
 
     
     (われ)  
265 かかなめて やすけかりけるわれなりき よをふきすさぶあらしのほかにいて
日々なめて 安けかりける吾なりき 世を吹き荒ぶ嵐の外に居て
 
266 さきさかる さくらのもとにおもうかな このくにのたみいずこにゆくや
咲き盛る 桜の下に思うかな 此国の民何処に行くや
 
267 ちのそこに あえぎくるしむこひつじを すくわむとしてわれはたつなり
地の底に 喘ぎ苦しむ小羊を 救わむとして我は起つなり
 
268 おおかみの おもきよさしはかしこくも しずのわがみにおわせたまえり
大神の 重き任さしは畏くも 賤のわが身に負わせ玉えり
 
269 ぬばたまの やみのよみちにゆきまよう よびとすくわむわがみわざかな
奴羽玉の 暗の夜路に行き迷う 世人救わむわが神業かな
 
270 むらきもの われがこころにむちうちて ちからかぎりにこのよすくわむ
村肝の 吾が心に鞭うちて 力限りに此世救わむ
 
271 ひとのよに ためしとてなきおおいなる ちからをかみはわれにたまいぬ
人の世に 例しとてなき大いなる 力を神は我に賜いぬ
 
272 しんぜんび まったきみよをつくらむと ちからかぎりにいそしむわれかな
真善美 完き御代を造らむと 力限りに励しむ吾かな
 
273 くしびなる わがかむわざはいにしえゆ ふみにもみえずことづてにもなき
奇びなる わが神業は古えゆ 文にも見えず言伝にもなき
 
274 おおいなる のぞみにいくるわれにして ちさきことにもこころくばるなり
大いなる 望みに生くる吾にして 小さき事にも心配るなり
 
     
     熱 海(あたみ)  
275 ふゆしらぬ あたみめぐましいちがつに うめさきにがつにさくらさくなり
冬知らぬ 熱海愛まし一月に 梅咲き二月に桜咲くなり
 
276 うみやまの けしきうるわしあさなさを いでゆにつかるあたみよきかな
海山の 景色美わし朝なさを 温泉に浸る熱海好きかな
 
277 しずかなる うみにうかべるはつしまを はるかにながめついでゆにつかれる
静かなる 海に泛べる初島を 遥かに眺めつ温泉に浸れる
 
278 はるさめの しとしとふりてしずやかに けむれるいずのとおきしまやま
春雨の しとしと降りて静やかに 烟れる伊豆の遠き島山
 
279 やまきよく うみしずかなるあたみわも いでゆのありてたらぬものなき
山清く 海静かなる熱海わも 温泉のありてたらぬものなき
 
280 なつははこね ふゆはあたみのひととなる かみのみさちのふかきをぞおもう
夏は箱根 冬は熱海の人となる 神の御幸の深きをぞ思う
 
281 やまもうみも しまもうるわしあたみこそ このうつしよのてんごくのかた
山も海も 島も美わし熱海こそ 此現世の天国の型
 
     
     霊 峰(れいほう)  
282 うえになく たみぐさあわれながきよを まことわすれしとがにかあらむ
飢に咢く 民草憐れ長き世を 誠忘れし尤にかあらむ
 
283 あたらしき うましのみよはあれむとし いまこのくにはなやみのなかなる
新しき 美しの御代は生れむとし 今斯国は悩みの中なる
 
284 くさもゆる はるのはいつにかわらねど うつりゆくよのうれたきすがたよ
草萌ゆる 春野は何時に易らねど 移りゆく世の憂れたき姿よ
 
285 ほろびゆく いつわりのよのはかなさよ ゆるさせたまうあめつちのかみ
滅び行く 偽りの世の儚なさよ 赦させ給う天地の神
 
286 こうみょうは はやさしそめぬもろびとよ こころのとびらはやひらけかし
光明は はや射し初めぬ諸人よ 心の扉はや開けかし
 
287 ちはやぶる かみのひかりにてらされて ただしきみちのあれなむとすも
千早振 神の光に照されて 正しき道の現れなむとすも
 
288 ひさかたの あまつみくにをちのうえに うちたてむこそわがねがいかも
久方の 天津御国を地の上に 打樹てむこそわが願いかも
 
289 おおいなる なやみのなかのこのくにに けだかくそびゆるふじのたかみね
大いなる 悩みの中の此国に 崇高く聳ゆる富士の高峰
 
     
     彌 勒 下 生(みろくげしょう)  
290 ひみずつち さんみいったいのみちからを そなえていでますみろくおおかみ
火水土 三位一体の御力を 具えて出でます五六七大神
 
291 ちじょうてんごく うちたてむとておおいなる ちからふるわすみろくおおかみ
地上天国 打樹てむとて大いなる 力揮わす五六七大神
 
292 ぬすびとの きつるがごとくひそやかに げしょうしませるみろくおおかみ
盗人の 来つるが如く窃やかに 下生しませる五六七大神
 
293 ばんにんの さいりんまちしきりすとも めしやもみろくもおなじとぞおもう
万人の 再臨待ちしキリストも メシヤもみろくも同じとぞ思う
 
294 いとたかき みくらをすててみすくいの ままにみろくはげしょうしませり
いと高き 御位をすてて御救いの ままにみろくは下生しませり
 
     
     浄 地 の 業(じょうちのわざ)  
295 ためしなき おおきちからによらずして などすくわめやこのうつしよを
例しなき 大き力に依らずして など救わめや此現世を
 
296 ちはやぶる かみのみひかりさしそめて ちりもあくたもきえゆくうれしさ
千早振る 神の御光射し初めて 塵も芥も消えゆく嬉しさ
 
297 おおかみの ひかりあまねくかがよいて よみがえるらむもものたみぐさ
大神の 光遍く輝よいて 蘇るらむももの民草
 
298 いくちとせ つもりつもりしちりあくた はらいきよめよよはしらのかみ
幾千年 積りつもりし塵芥 祓い浄めよ四柱の神
 
299 ひとみずの だいせんれいにうちきよめ ちじょうてんごくたつるとききぬ
火と水の 大洗霊に打浄め 地上天国樹つる時来ぬ
 
300 ちじょうてんごく うちたつるまでのいとふかき しぐみにありぬながきれきしは
地上天国 打樹つるまでのいと深き 仕組にありぬ長き歴史は
 
301 ちじょうてんごく みろくのみよとひとよぶも りそうせかいのことにぞありける
地上天国 五六七の御代と人称ぶも 理想世界の事にぞありける
 
     
     芸 術(げいじゅつ)  
302 いにしえの せいじゃはかみこしらゆうに つつまれたれどわれはしかせじ
古の 聖者は紙衣白木綿に 包まれたれど吾は然せじ
 
303 てんごくに よびとすくわむのぞみもて われまずてんごくにじゅうせむとすも
天国に 世人救わむ望みもて 吾先ず天国に住せむとすも
 
304 いかならん せいじゃといえどおのがみの じごくにありてよびとすくわめや
如何ならむ 聖者といえど己が身の 地獄に在りて世人救わめや
 
305 ひとのなさけ つきゆきはなにめをそらす ひとはみたまのひくきがゆえなり
人の情 月雪花に眼を外らす 人は身魂の低きが故なり
 
306 げいじゅつを たのしむこころゆたかなる ひとこそてんごくにじゅうすればなり
芸術を 娯しむ心裕なる 人こそ天国に住すればなり
 
307 はるのはな あきのもみじをめずるこそ かみのめぐみにこたうるなりける
春の花 秋の紅葉を賞ずるこそ 神の恵みに応うるなりける
 
308 はなわらい ももとりうたうはるぬのは かみがいざなうてんごくのその
花笑い 百鳥歌う春ぬ野は 神が誘う天国の苑
 
309 かちょうふうげつ われはともとしうきおおき よにもたのしくいきむとぞおもう
花鳥風月 吾は友とし憂き多き 世にも楽しく生きむとぞ思う
 
     
 

全三〇九首収録